The 2021 SSJ Fall Meeting

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Poster session (Oct. 15th)

Regular session » S08. Earthquake physics

P

Fri. Oct 15, 2021 3:30 PM - 5:00 PM ROOM P5 (ROOM P)

3:30 PM - 5:00 PM

[S08P-07] Preparation process for a Miyagi-Oki earthquake following the 2011 Tohoku-Oki earthquake

〇Ryoko NAKATA1, Ryota Hino1 (1.Tohoku University)

【はじめに】
宮城県沖では、1978年宮城県沖地震のように、過去にM>7海溝型大地震が約40年間隔で繰り返し発生し、沿岸地域に被害をもたらしてきた。この履歴に基づく長期評価に加え、2011年東北地方太平洋沖地震の影響を定性的に踏まえた結果、2021年1月時点では、宮城県沖でのM7.4前後の地震発生確率は30年以内に60~70 %程度となっている [地震調査研究推進本部, 2021]。ここで想定されている地震の震源域付近で2021年3月20日に発生したM6.9の地震の震源域は、1978年の震源域の西側の一部に重なると考えられており [地震調査研究推進本部, 2021年4月9日]、今後の推移が注目されている。 本研究では、地震発生の原因であるプレート境界での応力蓄積と解放過程に基づく数値シミュレーションを用いて、東北沖地震後の宮城県沖地震の準備過程について検討する。Nakata et al. [2016]では、地震発生サイクルシミュレーションで得られた121シナリオについて、M9地震後には、M9地震前の平均繰り返し間隔よりも短い間隔で、M>7宮城県沖地震が発生する場合が多く見られたと報告している。これは、M9地震の余効すべりが宮城県沖地震単独の場合よりも大きいために、宮城県沖の陸寄り地域での応力蓄積レートが高くなったためであると考えられる。
【手法】
地震発生サイクルシミュレーションは、先行研究 [Nakata et al., 2016]と同様の物理法則とプレート境界面形状で実施する。入力する摩擦パラメタの値や空間分布に関して、複数の条件で計算を行った。全モデルの共通点は、海溝近傍の走向方向に約100~150 km長の領域と、そのdowndip側の半径20~30 kmの円内部に、摩擦的に不安定な条件を設定したことである。これによって、東北沖地震のような海溝近傍で発生する繰り返し間隔数百年以上のM9クラス巨大地震と、そのdowndip側で発生するM7クラスの宮城県沖地震を再現する。Nakata et al. [2016]のFigure 2で示した摩擦パラメタを基にしたものがほとんどであるが、震源域の面積(宮城県沖地震の半径、M9震源域の走向・dip方向の広がり)や位置(中心座標、M9震源域とバックグラウンド領域との遷移幅)、各領域の摩擦パラメタの値、東北沖地震と宮城県沖地震以外の地震(福島県沖・茨城県沖・M9震源域内でのM~7地震)の有無などについて、モデルごとに少しずつ異なるものを用いた。
【結果・議論】
新たに計算した結果では、東北沖タイプの地震の規模・繰り返し間隔・震源域・余効すべりの時空間分布・前震や余震の有無、宮城県沖地震の規模・繰り返し間隔などが異なる約120シナリオが得られた。これらについて、宮城県沖地震を抽出し、各地震の発生間隔を計算する。その際、先行研究と同様に、東北沖地震と宮城県沖地震の共存が再現できていないシナリオ、つまり海溝近傍で発生する最大地震の規模がM<8.5の結果や、宮城県沖地震がM<7の結果は、除外する。M9地震以前の宮城県沖地震の繰り返し間隔を計算する際には、M9地震前の200年間に発生したM≧7地震を扱う。上述の違いに加え、M9地震の破壊継続時間がやや長い76シナリオ(地震波の放射によるエネルギー減衰を準動的に近似するダンピング係数が大きい条件で計算したもの)を含む先行研究の121シナリオを合わせた約240シナリオについて、先行研究と同様に、M9地震後には、M9地震前の平均繰り返し間隔よりも短い間隔で、M≧7宮城県沖地震が発生する場合が多く見られた。
 また、すべり速度の時空間変化からは、M9地震の前後で、宮城県沖地震の余効すべりの広がり方に顕著な違いが見られた。M9地震前の宮城県沖地震の余効すべりは、震源域のupdip側への伝播が顕著であった。一方、M9地震後では、updip側への伝播はほとんど見られなかった。この違いは、宮城県沖地震震源域のupdip側、つまりM9地震震源域の固着がどの程度はがれているかに起因すると考えられる。今後の宮城県沖地震の発生時期を議論するには、2021年3月の地震の余効すべりがupdip側でどのようになっているかを観測から明らかにしたうえで、シミュレーション結果と照らし合わせた議論をする必要があろう。

【謝辞】
本研究の一部は、JSPS科研費Grant Number JP21K04604およびJP19H05596の助成を受けて実施されたものです。本研究のシミュレーション結果は、東北大学サイバーサイエンスセンターの大規模科学計算システムおよびJAMSTECのスーパーコンピュータ「地球シミュレータ」を利用して得られたものです。