15:30 〜 17:00
[S08P-08] 動力学的震源モデルに基づく中央構造線断層帯の連動性の検討
中央構造線断層帯は,日本で最も活動的な断層帯のひとつである.この断層帯の連動可能性とその条件を検討するため,断層帯の置かれた条件を反映した動力学的震源モデルを構築し,動的破壊シミュレーションをおこなう.本稿では,中央構造線断層帯讃岐山脈南縁東部区間,同西部区間,石鎚山脈北縁区間,同西部区間を対象として,既存情報を基にプロトタイプの震源モデルを構築し,連動可能性について調べるための試計算をおこなった結果を報告する.
断層モデル各区間の走向と長さは,都市圏活断層図 (後藤・他, 1998; 中田・他, 1998;岡田・他, 1998; 堤・他, 1998; 後藤・他, 1999; 中田・他, 1999; 岡田・他, 1999; 堤・他, 1999; 中田・他, 2009; 岡田・他, 2009; 岡田・他, 2014) を基に決定した.また,傾斜角と地震発生層の深さについて,地震調査研究推進本部 (2017) では中角度と高角度を併記しているが,本稿では,まず,高角度(鉛直)の場合のみを扱う.モデルは半無限媒質とし,地震波速度構造はNakajima and Hasegawa (2007) の紀伊半島・中国四国地方のモデルを,密度は日本列島基盤岩類物性データベース (大熊・金谷, 2007) を参考に仮定した.
応力場は2通りのモデルを設定した.ひとつは,佐々連における応力解放法による応力測定データ (Tanaka, 1986; 斎藤・他, 1988) より,最大主圧縮応力(σ1)は東西方向,最小主圧縮応力(σ3)は南北方向としたもの,もうひとつは,有限要素法による静的解析( 文部科学省・産総研, 2021) から,もっとも変位が大きくなると推定された,σ1はN60°W,σ3はN30°Eとしたものである.どちらも,σ1とσ3の大きさは応力測定データを参照,また,中間主応力(σ2)は鉛直でかぶり圧に等しいとし,それぞれ深さに比例するとした.その上で,破壊の始まる領域の応力降下量の比例係数aを仮定し,静水圧条件が成り立つとして,動摩擦係数を求めた.更に,破壊の始まる区間での強度と応力降下量の比 (Andrews, 1976; Das and Aki, 1977) を1.6と仮定して,静摩擦係数を求めた.摩擦係数は破壊の始まる領域の走向によって異なるが,aを1.0として,間隙水圧を考慮しない場合,動摩擦係数は概ね0.2〜0.5程度となった.
断層面の境界条件には,Coulombの破壊基準とすべり弱化の摩擦構成則 (Ida, 1972; Andrews, 1976) を仮定し,弾性体の運動方程式を差分法 (Kase and Day, 2006) で解くことによって,断層面上の破壊伝播過程を求めた.臨界すべり量は,全セグメント共通で0.50mとした.
σ1の向きと破壊の始まる領域の走向によって各区間の応力状態が異なるため,それに対応した様々な連動パターンが得られた.例えば,石鎚山脈北縁区間東端から破壊が始まった場合や,石鎚山脈北縁西部区間東端から破壊が始まる場合は,σ1の向きが東西の場合,N60°Wの場合とも,その区間のみの破壊に留まる.一方,讃岐山脈南縁東部区間東端から破壊が始まる場合,σ1の向きが東西の場合は4区間のほぼ全域にわたって破壊が広がるのに対し,N60°Wの場合は,讃岐山脈南縁西部区間の西端で破壊が停止し,石鎚山脈北縁区間以西には広がらないというように,σ1の向きによって破壊の広がり方が異なる.今後,応力降下量の比例係数aを変えてシミュレーションをおこない,各区間,各地点での1回の活動によるすべり量を説明しうるパラメータの範囲を調べる必要がある.
謝辞:本研究は,文部科学省委託事業「連動型地震の発生予測のための活断層調査研究」として実施されました.
断層モデル各区間の走向と長さは,都市圏活断層図 (後藤・他, 1998; 中田・他, 1998;岡田・他, 1998; 堤・他, 1998; 後藤・他, 1999; 中田・他, 1999; 岡田・他, 1999; 堤・他, 1999; 中田・他, 2009; 岡田・他, 2009; 岡田・他, 2014) を基に決定した.また,傾斜角と地震発生層の深さについて,地震調査研究推進本部 (2017) では中角度と高角度を併記しているが,本稿では,まず,高角度(鉛直)の場合のみを扱う.モデルは半無限媒質とし,地震波速度構造はNakajima and Hasegawa (2007) の紀伊半島・中国四国地方のモデルを,密度は日本列島基盤岩類物性データベース (大熊・金谷, 2007) を参考に仮定した.
応力場は2通りのモデルを設定した.ひとつは,佐々連における応力解放法による応力測定データ (Tanaka, 1986; 斎藤・他, 1988) より,最大主圧縮応力(σ1)は東西方向,最小主圧縮応力(σ3)は南北方向としたもの,もうひとつは,有限要素法による静的解析( 文部科学省・産総研, 2021) から,もっとも変位が大きくなると推定された,σ1はN60°W,σ3はN30°Eとしたものである.どちらも,σ1とσ3の大きさは応力測定データを参照,また,中間主応力(σ2)は鉛直でかぶり圧に等しいとし,それぞれ深さに比例するとした.その上で,破壊の始まる領域の応力降下量の比例係数aを仮定し,静水圧条件が成り立つとして,動摩擦係数を求めた.更に,破壊の始まる区間での強度と応力降下量の比 (Andrews, 1976; Das and Aki, 1977) を1.6と仮定して,静摩擦係数を求めた.摩擦係数は破壊の始まる領域の走向によって異なるが,aを1.0として,間隙水圧を考慮しない場合,動摩擦係数は概ね0.2〜0.5程度となった.
断層面の境界条件には,Coulombの破壊基準とすべり弱化の摩擦構成則 (Ida, 1972; Andrews, 1976) を仮定し,弾性体の運動方程式を差分法 (Kase and Day, 2006) で解くことによって,断層面上の破壊伝播過程を求めた.臨界すべり量は,全セグメント共通で0.50mとした.
σ1の向きと破壊の始まる領域の走向によって各区間の応力状態が異なるため,それに対応した様々な連動パターンが得られた.例えば,石鎚山脈北縁区間東端から破壊が始まった場合や,石鎚山脈北縁西部区間東端から破壊が始まる場合は,σ1の向きが東西の場合,N60°Wの場合とも,その区間のみの破壊に留まる.一方,讃岐山脈南縁東部区間東端から破壊が始まる場合,σ1の向きが東西の場合は4区間のほぼ全域にわたって破壊が広がるのに対し,N60°Wの場合は,讃岐山脈南縁西部区間の西端で破壊が停止し,石鎚山脈北縁区間以西には広がらないというように,σ1の向きによって破壊の広がり方が異なる.今後,応力降下量の比例係数aを変えてシミュレーションをおこない,各区間,各地点での1回の活動によるすべり量を説明しうるパラメータの範囲を調べる必要がある.
謝辞:本研究は,文部科学省委託事業「連動型地震の発生予測のための活断層調査研究」として実施されました.