15:30 〜 17:00
[S08P-19] 仕事率の増加と鏡面の生成・破壊にともなうインド砂岩の摩擦・摩耗率の変動
断層帯の幅は断層の累積変位量と正の相関があり,断層の成長や活動を評価する上での重要な指標の1つである.一方,Shipton et al. (2006) は砂岩内に発達する断層帯の幅が累積変位量に対して著しく小さいことを指摘した.その要因の1つとして,断層面に発達する‘Slickenside (鏡肌)’が挙げられる.Hirose et al. (2012) は石灰岩質砂岩を用いた高速剪断摩擦実験に基づき,試料の剪断面に発達したshiny slickenside surface (以下,鏡面) が断層帯の幅の成長率を小さくする可能性を示唆した.炭酸塩岩(炭酸塩鉱物を多く含む岩石も含む)に発達する鏡面に関する研究は多数行われており,その生成・破壊条件や摩擦・摩耗特性が明らかにされつつある (e.g., Smith et al., 2013; Verbern et al., 2014; Park et al., 2021).一方で,石英質砂岩における鏡面の生成条件等については不明な点が多く,摩擦特性等とともに明らかにする必要がある.
そこで本研究では,インドラジャスタン州カラウリに産出する白砂岩(以下,インド砂岩)を対象とした高速剪断摩擦試験を行い,模擬断層面に発達する鏡面の生成・破壊条件及び摩擦・摩耗特性を明らかにする.実験条件は垂直荷重を0.5もしくは1.0 MPaとし,すべり速度(等価変位速度)を1.2×10-3-1.7×10-1 m/sの範囲とした.本研究では,すべり距離が60-100 mの間で測定された摩擦係数の平均値(μave)を代表値として使用する.鏡面の生成・破壊条件が摩擦すべりによる温度上昇に伴う化学反応と密接に関連していると予想されるため,仕事率(剪断応力とすべり速度の積),温度,μaveの関係性を調べた.模擬断層面近傍の温度は赤外放射温度計(KEYENCE IT2-02, IT2-50)を用いて連続的に計測した.また,摩耗率を調べるため軸方向の変位をレーザー変位計(Micro-Epsilon, optoNCDT IDL1700-50)を用いてモニターした.
本実験結果から,仕事率,試料剪断面の構造,および摩擦係数には4つのフェーズがあることが判明した. 1)仕事率が10-4 MJ m−2 s−1のオーダーではμaveは約0.5を示し,剪断面に鏡面の発達を確認.2)仕事率が10-3 MJ m−2 s−1を超えるとμaveは低下傾向を示し,仕事率が10-2 MJ m−2 s−1の時にμaveは約0.2に減少.剪断面に鏡面の発達を確認.3)仕事率が3.6×10-2 MJ m−2 s−1の時にμaveは約0.4まで増加.剪断面には顕著な摩耗痕が確認.4)仕事率が4.7×10-2 MJ m−2s−1の時にμaveは約0.3に減少.剪断面に摩耗痕と鏡面の両構造が確認.1回の実験(全すべり距離:~200m)中に有意な軸方向の変位は認められず,すべり距離に対する軸方向変位の変化はnm/mのオーダーであった.
炭酸塩岩を用いた実験では鏡面は高速度下で形成され,低速度下(< ~0.07 m s-1)では形成されないことが明らかにされている(e.g., Hirose et al., 2012; Siman-Tov er al., 2015; Park et al., 2021).一方,インド砂岩は一部の条件(1.7×10-1m/s,0.5 MPa)を除き,残りの全ての実験で鏡面の発達が確認できた.すなわち,鏡面の生成・破壊条件は岩種によって異なることを意味している.また,本研究の実験範囲では,鏡面が発達しない条件における一時的な摩擦係数の増加を除き,インド砂岩の摩擦係数および摩耗率が低いことが判明したことから,その著しく低い摩耗率は,鏡面が容易に形成されることに起因すると考えられる.Di Toro et al.(2011)は石英の非晶質化とゲル化により,石英岩の摩擦が非常に低いことを報告している.インド砂岩の構成鉱物の約70%は石英であることから,本研究で明らかとなった低摩擦・低摩耗率も石英の特性に起因すると考えられる.
本研究結果から,Ⅰ)岩種によって鏡面の生成・破壊条件が異なる,Ⅱ)砂岩の摩擦係数・摩耗率は構成鉱物の特性を強く反映している,ことが示唆された.これらの結果は、砂岩中に発達する断層帯の成長の理解に貢献すると考えられる.
そこで本研究では,インドラジャスタン州カラウリに産出する白砂岩(以下,インド砂岩)を対象とした高速剪断摩擦試験を行い,模擬断層面に発達する鏡面の生成・破壊条件及び摩擦・摩耗特性を明らかにする.実験条件は垂直荷重を0.5もしくは1.0 MPaとし,すべり速度(等価変位速度)を1.2×10-3-1.7×10-1 m/sの範囲とした.本研究では,すべり距離が60-100 mの間で測定された摩擦係数の平均値(μave)を代表値として使用する.鏡面の生成・破壊条件が摩擦すべりによる温度上昇に伴う化学反応と密接に関連していると予想されるため,仕事率(剪断応力とすべり速度の積),温度,μaveの関係性を調べた.模擬断層面近傍の温度は赤外放射温度計(KEYENCE IT2-02, IT2-50)を用いて連続的に計測した.また,摩耗率を調べるため軸方向の変位をレーザー変位計(Micro-Epsilon, optoNCDT IDL1700-50)を用いてモニターした.
本実験結果から,仕事率,試料剪断面の構造,および摩擦係数には4つのフェーズがあることが判明した. 1)仕事率が10-4 MJ m−2 s−1のオーダーではμaveは約0.5を示し,剪断面に鏡面の発達を確認.2)仕事率が10-3 MJ m−2 s−1を超えるとμaveは低下傾向を示し,仕事率が10-2 MJ m−2 s−1の時にμaveは約0.2に減少.剪断面に鏡面の発達を確認.3)仕事率が3.6×10-2 MJ m−2 s−1の時にμaveは約0.4まで増加.剪断面には顕著な摩耗痕が確認.4)仕事率が4.7×10-2 MJ m−2s−1の時にμaveは約0.3に減少.剪断面に摩耗痕と鏡面の両構造が確認.1回の実験(全すべり距離:~200m)中に有意な軸方向の変位は認められず,すべり距離に対する軸方向変位の変化はnm/mのオーダーであった.
炭酸塩岩を用いた実験では鏡面は高速度下で形成され,低速度下(< ~0.07 m s-1)では形成されないことが明らかにされている(e.g., Hirose et al., 2012; Siman-Tov er al., 2015; Park et al., 2021).一方,インド砂岩は一部の条件(1.7×10-1m/s,0.5 MPa)を除き,残りの全ての実験で鏡面の発達が確認できた.すなわち,鏡面の生成・破壊条件は岩種によって異なることを意味している.また,本研究の実験範囲では,鏡面が発達しない条件における一時的な摩擦係数の増加を除き,インド砂岩の摩擦係数および摩耗率が低いことが判明したことから,その著しく低い摩耗率は,鏡面が容易に形成されることに起因すると考えられる.Di Toro et al.(2011)は石英の非晶質化とゲル化により,石英岩の摩擦が非常に低いことを報告している.インド砂岩の構成鉱物の約70%は石英であることから,本研究で明らかとなった低摩擦・低摩耗率も石英の特性に起因すると考えられる.
本研究結果から,Ⅰ)岩種によって鏡面の生成・破壊条件が異なる,Ⅱ)砂岩の摩擦係数・摩耗率は構成鉱物の特性を強く反映している,ことが示唆された.これらの結果は、砂岩中に発達する断層帯の成長の理解に貢献すると考えられる.