The 2021 SSJ Fall Meeting

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Poster session (Oct. 15th)

Regular session » S08. Earthquake physics

P

Fri. Oct 15, 2021 3:30 PM - 5:00 PM ROOM P5 (ROOM P)

3:30 PM - 5:00 PM

[S08P-22] Physical Properties of Core Samples Recovered from a seismogenic zone and the host rock of a M5.5 Earthquake

〇Kensuke Sakaguchi1, Shunsuke Yoshida2, Mitsuya Higashi3, Yuki Yokoyama4, Koichiro Suzuki1, Yasuo Yabe5, Dakalo Ligaraba6, Nandipha Masondo6, Tetsuro Hirono7, Yuji Yamamoto8, Takuya Matsuzaki8, Hiroshi Ogasawara9, Seiya Ohba9, Masaya Wakimoto9 (1.Graduate School of Sci. Eng., Ritsumeikan Univ., 2.Japan Mint, 3.Mazda Motor Corporation, 4.TechnoPro, Inc., 5.Graduate School of Science, Tohoku Univ., 6.Graduate School of Geoscience, University of the Witwatersrand, 7.Graduate School of Science, Osaka Univ., 8.Center for Advanced Marine Core Research, Kochi Univ., 9.College of Sci and Eng., Ritsumeikan Univ.)

地震発生場については、地表や海底付近からの遠隔観測が充実し、近年、研究の進展がめざましい。これらの研究では、観測結果を説明する物理パラメータを地震発生場と想像される場所に分布させ、観測データに合うようにその時空間発展を運動幾何学的に拘束して地震発生場の理解を深めている(例えば、加藤、2012)。ところが、なぜそこが地震発生場になったか、あるいは、実際に、そこで局所的に岩石と破壊と水がどのように相互作用し、応力やレオロジー特性の不均質が生まれているかを決定づけるためは、地震発生場とその周囲の直接的な調査が不可欠である(例えば、廣野・他、2013)。

地表や海底からの掘削調査が直接調査の唯一の方法である。地震発生場に到達する掘削と直接調査に挑戦したものとしては、例えば、米国のサンアンドレアス断層掘削計画(例えばZoback et al. 2011)、日本の南海トラフ地震発生帯掘削計画(Tobin et al. 2020)などがある。しかし、これらの計画では、地震発生場まで到達させることや、主にロータリー掘削であるため、試料を破壊せずに十分な量を回収することに成功していない。

この残された課題に取り組むことのできる絶好の機会が、2014年に南アフリカMoab Khotsong金鉱山下で発生した、左横ずれ型のM5.5オークニー地震であった。ICDP 「DSeis計画」は、地下2.9㎞の密度と地震波速度が上部地殻に近い29億年前に堆積し変成した堅固な岩盤内にある坑道から三本の孔(Hole A,B,C)をワイヤライン・フルコア掘削し、総延長1.6㎞のコア試料を掘削時のダメージを抑制して回収することに成功した。Hole A(817m)はオークニー地震の余震発生帯まで約100mの位置に到達した。Hole B(約700m)はM5.5断層上部と交差させることができた。しかし、孔口から612~620mの破砕帯区間(掘削水のロスもあった)はコアが十分回収ができなかった。そのため、Hole Bの544mから分岐孔であるHole C(96m)を掘削し、最も重要な区間は1.5m長のトリプルチューブでコア試料をより多く回収できた。

横山(2020 阪大修論)は回収したコア試料から、破砕帯付近については1m間隔を目安に、1cm厚のディスクを切り出し、薄片観察や粉末XRD、XRF分析を行い、断層交差部付近がタルクや黒雲母に富む剪断構造を持つことを確認した。 吉田(2021 立命大修論)と阪口(2021立命大卒業研究)では孔内検層データや⾼知コアセンターに輸⼊された破砕帯付近のコアのP波伝播速度、密度、⾃然γ線、磁化率を測定し、X線CTスキャンによる分析の結果をとりまとめた。本ポスターでは、この結果を報告する。

⺟岩に貫入したドレライト・シルは密度とP波速度が下部地殻物質並みであった。Hole BとCの断層交差部直前からは、密度は下部地殻並み(約3000kg/m3)である厚さ数mランプロファイア・ダイクが始まり、Hole BとCとの断層交差位置からダイクの走向はM5.5断層の走向・傾斜と調和的であることがわかった。また、ランプロファイア・ダイクの区間には、P波速度が低く、磁化率が高い部分があり、そこは、横山(2020)が確認したタルクが多い場所と一致した。
X線CTスキャンは、全輸入コアに対して医療用(分解能0.35mm以下)のものを、一部のコアに対しては産業用(分解能数十µm)のものを実施してある。本ポスターでは、これらから読み取れるCT値の3次元分布の特徴との比較もとりまとめて報告する予定である。


謝辞:
 掘削と孔内検層はICDPとMoab Khotsong鉱山、高知コアセンターの非破壊分析は同センター共同利用、南アフリカと高知コアセンターでの活動はJSPSCore-to-Core Program, 災害の軽減に貢献するための地震火山研究計画、立命館大学の支援を頂いた。南アフリカでは、CSIR、Witwatersrand大、CGSの方々のお世話になった。