11:15 AM - 11:30 AM
[S09-08] Long-term features of the 2011 Tohoku-oki aftershocks: Central shutdown and surrounding activation
2011年東北地方太平洋沖地震(M9.0)から10年が経過したにもかかわらず,依然として余震と考えられる地震活動が続いている.特に,2月13日には福島県沖でM7.3のスラブ内地震(深さ55km)が発生し,蔵王町,国見町などで最大震度6強を記録した(気象庁,2021).その後も,3月20日に宮城県沖でM6.9(深さ59km),5月1日に同じく宮城県沖でM6.8(深さ51km)のプレート境界型地震が発生した.東北沖震源域周辺の今後の地震ハザード評価に資するため,本発表では余震活動の継続性について検討する.
【最近5年間(2016-2021)と東北沖地震前の比較】まず東北沖地震からの10年を5年区切りで前半(2011/3/11-2016/3/10)と後半(2016/3/11-2021/3/10)に分け,余震活動の継続性の観点から,後半の活動に注目した.特に東北沖地震前(1998/1/1-2011/3/10)を常時地震活動(background seismicity)と仮定し,後半の活動の変化を検討した.その結果を図1aに示す.常時地震活動に比べて数倍〜数十倍の余震活動域が震源域を囲むようにドーナッツ状に広がる.特に,三陸沖〜福島沖近海と海溝軸〜その東側(アウターライズ)が顕著である.対称的に,東北沖地震の震源域でも特に大すべり域(例えば,Iinuma et al., JGR, 2012)で顕著に地震活動が低下している.この震源域での活動低下については,Kato & Igarashi (GRL, 2012)による報告もあるが,後半の活動では静穏化がより明瞭になっている.また,プレート境界だけではなく震源域のスラブ内にも広がっているようにみえる(図1c).
【東北沖本震と大規模余震によるクーロン応力モデル】次に,これらの地震活動度変化を説明するために,クーロン応力変化と速度および状態依存摩擦則(Dieterich, JGR, 1994)を組み合わせた地震活動予測モデル(以下,クーロン応力モデル.Toda et al., JGR, 1998)を適用した.クーロン応力変化は本震直後の地震活動を概ね説明するが(Okada et al., EPS, 2011; Toda et al., EPS, 2011),今回は応力―地震活動応答の地域性や時系列を検討するため,前段のモデルを改良したToda & Stein (BSSA, 2020)の手法を導入した.同手法の特徴は,レシーバ断層として常時地震活動時のメカニズム解(ここでは防災科研,F-net)を用い,本震だけではなく前半5年間に発生したM≥6.5余震による応力変化も考慮して,状態変数を時空間的に時々刻々に変化させることにある.また,実際に観測された余震発生レートから摩擦則パラメータ・常時地震レートを学習・最適化するなどの工夫を行っている.さらに,同モデルではDieterich (1994)の余震継続期間taを一定にしても(ここでは20年),多様なレシーバ断層上の応力変化の不均質分布により,地域によってこの初期値が大きく変動するのも特徴である.前半5年間までの震源データを用いて後半5年間の地震活動度変化をレトロスペクティブ(retrospective)に予測したものを図1bに示す.実際の観測結果(図1a)と概ね整合することがわかる.三次元的にみると,例えば福島県―福島県沖を横断する断面図(図1c)では,震源域の全面的静穏化とスラブ内地震,アウターライズ地震の継続的な活発化がわかる.スラブ内地震,アウターライズ地震の活動の持続化は,応力載荷速度(secular stressing rate)の速いプレート境界に比較して,プレート内の載荷速度が遅いことによる応力伝播効果の長期化とも考えられる(Stein & Liu, Nature, 2009; Toda & Stein, BSSA, 2018).本年2月13日のスラブ内地震もこの長期的余震域で発生した.また,1896年明治三陸地震(プレート境界型)と1933年昭和三陸地震(アウターライズ型)のペアにみられるように今後長期にわたって大規模なアウターライズ地震の発生も危惧される.
謝辞:地震活動の解析・モデリングにあたっては気象庁一元化震源カタログ(暫定も含む),防災科学技術研究所F-netメカニズム解を使用した.
【最近5年間(2016-2021)と東北沖地震前の比較】まず東北沖地震からの10年を5年区切りで前半(2011/3/11-2016/3/10)と後半(2016/3/11-2021/3/10)に分け,余震活動の継続性の観点から,後半の活動に注目した.特に東北沖地震前(1998/1/1-2011/3/10)を常時地震活動(background seismicity)と仮定し,後半の活動の変化を検討した.その結果を図1aに示す.常時地震活動に比べて数倍〜数十倍の余震活動域が震源域を囲むようにドーナッツ状に広がる.特に,三陸沖〜福島沖近海と海溝軸〜その東側(アウターライズ)が顕著である.対称的に,東北沖地震の震源域でも特に大すべり域(例えば,Iinuma et al., JGR, 2012)で顕著に地震活動が低下している.この震源域での活動低下については,Kato & Igarashi (GRL, 2012)による報告もあるが,後半の活動では静穏化がより明瞭になっている.また,プレート境界だけではなく震源域のスラブ内にも広がっているようにみえる(図1c).
【東北沖本震と大規模余震によるクーロン応力モデル】次に,これらの地震活動度変化を説明するために,クーロン応力変化と速度および状態依存摩擦則(Dieterich, JGR, 1994)を組み合わせた地震活動予測モデル(以下,クーロン応力モデル.Toda et al., JGR, 1998)を適用した.クーロン応力変化は本震直後の地震活動を概ね説明するが(Okada et al., EPS, 2011; Toda et al., EPS, 2011),今回は応力―地震活動応答の地域性や時系列を検討するため,前段のモデルを改良したToda & Stein (BSSA, 2020)の手法を導入した.同手法の特徴は,レシーバ断層として常時地震活動時のメカニズム解(ここでは防災科研,F-net)を用い,本震だけではなく前半5年間に発生したM≥6.5余震による応力変化も考慮して,状態変数を時空間的に時々刻々に変化させることにある.また,実際に観測された余震発生レートから摩擦則パラメータ・常時地震レートを学習・最適化するなどの工夫を行っている.さらに,同モデルではDieterich (1994)の余震継続期間taを一定にしても(ここでは20年),多様なレシーバ断層上の応力変化の不均質分布により,地域によってこの初期値が大きく変動するのも特徴である.前半5年間までの震源データを用いて後半5年間の地震活動度変化をレトロスペクティブ(retrospective)に予測したものを図1bに示す.実際の観測結果(図1a)と概ね整合することがわかる.三次元的にみると,例えば福島県―福島県沖を横断する断面図(図1c)では,震源域の全面的静穏化とスラブ内地震,アウターライズ地震の継続的な活発化がわかる.スラブ内地震,アウターライズ地震の活動の持続化は,応力載荷速度(secular stressing rate)の速いプレート境界に比較して,プレート内の載荷速度が遅いことによる応力伝播効果の長期化とも考えられる(Stein & Liu, Nature, 2009; Toda & Stein, BSSA, 2018).本年2月13日のスラブ内地震もこの長期的余震域で発生した.また,1896年明治三陸地震(プレート境界型)と1933年昭和三陸地震(アウターライズ型)のペアにみられるように今後長期にわたって大規模なアウターライズ地震の発生も危惧される.
謝辞:地震活動の解析・モデリングにあたっては気象庁一元化震源カタログ(暫定も含む),防災科学技術研究所F-netメカニズム解を使用した.