2:15 PM - 2:30 PM
[S09-15] Intraplate repeating earthquakes in the Fukushima-Ibaraki border region following the 2011 Tohoku-Oki earthquake and their factors
2011年3月に発生した東北地方太平洋沖地震以降、福島-茨城県境周辺では非常に活発な地震活動が続いている。特に、茨城県北部においては2011年3月19日と2016年12月28日にM6程度の地震が発生しており、2つの地震が同一の断層の同じ場所を繰り返し破壊した可能性が指摘されている(Fukushima et al., 2018; Uchide, 2017, JpGU)。内陸断層で地震がこのような短期間で繰り返し発生する事例は極めて珍しく、この事例を調べることは内陸地震の発生サイクルや応力蓄積・解放過程を理解する上で極めて重要であるといえる。本研究では,福島-茨城県境周辺の地震活動中の小中地震に含まれる繰り返し地震を検出し,更にその情報を震源分布の時空間変化および地震活動の情報と組み合わせることにより、M6地震の繰り返しの原因について調べた。
最初に、2003年から2018年10月31日までに福島-茨城県境周辺で発生した気象庁マグニチュード1以上の地震45988個を対象に、Double-Difference法 (Waldhauser & Ellsworth, 2002)を用いた震源の再決定を行った。得られた震源分布は複雑な微細断層構造を示した。ただし茨城県北部地域では地震活動が西へ傾斜する一枚の面構造に集中しており、M6地震はこの断層上で発生したと考えられる。
次に、繰り返し地震の検出を行った。多くの先行研究では繰り返し地震の検出のために、波形の相互相関を用いているが、その方法では近傍で起こった地震群を繰り返し地震と見誤る可能性がある。本研究では、精密な震源再決定位置に基づき繰り返し地震の検出を行った。具体的には、全地震ペアの震源間距離を地震の断層サイズと比較することにより、次の条件に基づいて繰り返し地震の検出を行なった。(1) 地震間距離 < 平均断層半径、(2) マグニチュードの差が0.5以下となる地震ペアを繰り返し地震ペアとみなした。この際,断層サイズは、応力降下量20MPa (池田・他,2020, JpGU)の円形断層を仮定して求めた。その結果、379個の地震ペアが見つかり、その多くが茨城県北部に分布することが分かった。これらの地震ペアの地震波形は近傍の観測点で見ても非常によく似ており、断層上の同一の場所を破壊した繰り返し地震である可能性が高いと思われる。
震源再決定により得られた震源分布から、茨城県北部で2011年と2016年に発生したM6地震直後の余震の時空間分布を調べると、それぞれのM6地震の震源周辺から余震域が徐々に拡大している様子が見られた。2つのM6地震後の余効滑りに起因している可能性がある。Nadeau & Johnson (1998)による経験式に基づき、繰り返し地震間の周囲の非地震性すべり量を推定したところ、20cm前後の値が得られた。Fukushima et al. (2018)は、2011年に発生したM6地震による余効滑り量を推定し、その大きさが数十 cm程度以上と非常に大きかったことを示しているが、研究で検出された繰り返し地震は、この余効滑りの影響により発生した可能性が考えられる。
茨城県北部で繰り返し発生したことが推定されている 2つのM6地震のうち、2011年の地震の余震活動が2016年の地震のそれに比べて顕著に活発であったことが分かった。2011年の地震の余震の減衰率は通常の大森公式に比べても有意に小さかった。GPS観測点で計測された地震直後の余効変動も 2011年の M6地震の場合の方が 2016年の地震よりも大きかった。2011年の M6地震の余効滑り量が同規模の内陸地震に比べ異常に大きかったことが報告されているが (Fukushima et al., 2018)、その量は同じ場所で発生した 2016年の M6地震に比べても大きかったことが示唆される。同一の場所にもかかわらず余効すべり量の大きさが異なった要因として、震源域の状態の時間変化が考えられる。ひとつに2011年東北沖地震による余効変動の減衰により応力増加レートが減少したことが影響しているかもしれない。あるいは、間隙水圧の時間変化が余効すべり量に影響を与えた可能性も考えられる。群発地震の解析から、東北日本のいくつかの地域では、東北沖地震後の地殻流体の上昇により間隙水圧が時間変化したことが推定されている (Yoshida et al., 2016)。茨城北部地域においても、東北沖地震直後の2011年のM6地震の際には,上昇してきた地殻流体により地震・余効すべりが生じやすくなっていた可能性も考えられる。
最初に、2003年から2018年10月31日までに福島-茨城県境周辺で発生した気象庁マグニチュード1以上の地震45988個を対象に、Double-Difference法 (Waldhauser & Ellsworth, 2002)を用いた震源の再決定を行った。得られた震源分布は複雑な微細断層構造を示した。ただし茨城県北部地域では地震活動が西へ傾斜する一枚の面構造に集中しており、M6地震はこの断層上で発生したと考えられる。
次に、繰り返し地震の検出を行った。多くの先行研究では繰り返し地震の検出のために、波形の相互相関を用いているが、その方法では近傍で起こった地震群を繰り返し地震と見誤る可能性がある。本研究では、精密な震源再決定位置に基づき繰り返し地震の検出を行った。具体的には、全地震ペアの震源間距離を地震の断層サイズと比較することにより、次の条件に基づいて繰り返し地震の検出を行なった。(1) 地震間距離 < 平均断層半径、(2) マグニチュードの差が0.5以下となる地震ペアを繰り返し地震ペアとみなした。この際,断層サイズは、応力降下量20MPa (池田・他,2020, JpGU)の円形断層を仮定して求めた。その結果、379個の地震ペアが見つかり、その多くが茨城県北部に分布することが分かった。これらの地震ペアの地震波形は近傍の観測点で見ても非常によく似ており、断層上の同一の場所を破壊した繰り返し地震である可能性が高いと思われる。
震源再決定により得られた震源分布から、茨城県北部で2011年と2016年に発生したM6地震直後の余震の時空間分布を調べると、それぞれのM6地震の震源周辺から余震域が徐々に拡大している様子が見られた。2つのM6地震後の余効滑りに起因している可能性がある。Nadeau & Johnson (1998)による経験式に基づき、繰り返し地震間の周囲の非地震性すべり量を推定したところ、20cm前後の値が得られた。Fukushima et al. (2018)は、2011年に発生したM6地震による余効滑り量を推定し、その大きさが数十 cm程度以上と非常に大きかったことを示しているが、研究で検出された繰り返し地震は、この余効滑りの影響により発生した可能性が考えられる。
茨城県北部で繰り返し発生したことが推定されている 2つのM6地震のうち、2011年の地震の余震活動が2016年の地震のそれに比べて顕著に活発であったことが分かった。2011年の地震の余震の減衰率は通常の大森公式に比べても有意に小さかった。GPS観測点で計測された地震直後の余効変動も 2011年の M6地震の場合の方が 2016年の地震よりも大きかった。2011年の M6地震の余効滑り量が同規模の内陸地震に比べ異常に大きかったことが報告されているが (Fukushima et al., 2018)、その量は同じ場所で発生した 2016年の M6地震に比べても大きかったことが示唆される。同一の場所にもかかわらず余効すべり量の大きさが異なった要因として、震源域の状態の時間変化が考えられる。ひとつに2011年東北沖地震による余効変動の減衰により応力増加レートが減少したことが影響しているかもしれない。あるいは、間隙水圧の時間変化が余効すべり量に影響を与えた可能性も考えられる。群発地震の解析から、東北日本のいくつかの地域では、東北沖地震後の地殻流体の上昇により間隙水圧が時間変化したことが推定されている (Yoshida et al., 2016)。茨城北部地域においても、東北沖地震直後の2011年のM6地震の際には,上昇してきた地殻流体により地震・余効すべりが生じやすくなっていた可能性も考えられる。