The 2021 SSJ Fall Meeting

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Room C

Regular session » S09. Statistical seismology and underlying physical processes

PM-1

Thu. Oct 14, 2021 1:30 PM - 3:00 PM ROOM C (ROOM C)

chairperson:Yuki Noda(Kyoto University), Masaru Nakano(JAMSTEC)

2:45 PM - 3:00 PM

[S09-17] Seismic activity (D>10km) around the summit of Mt. Ontake (1)

〇Yoshiko YAMANAKA1 (1.Univ. of Nagoya )

<<はじめに>>
 2007年と2014年の御嶽山噴火前後の地震活動を比較するため、御嶽山山頂周辺で発生する地震活動を調べていたところ、ある限られた領域(図1)でやや深い(深さ3-35km)地震が発生していることがわかった。御嶽山山頂周辺で発生する地震はM<1の地震が多いが、これらの地震は比較的規模の大きい(M2-M3)ものも発生している。これらの地震の内、図1の領域Dはほぼ1984年長野県西部地震の断層(図1中の四角形)下限にあたる。また図1のハッチをつけた範囲では長野県西部地震以降群発的に地震が発生している。さらに御岳湖付近の深さ30-35km(領域E)では低周波地震が発生する。
 そこでMatched Filter法を用いて御嶽山山頂周辺でのやや深い地震および山頂直下の地震活動を2006年まで遡って調べた。
<<手法>>
 2014年御嶽山噴火の直前直後の地震活動を調べたKato et al. (2014)に従い、Matched Filter法を山頂周辺の観測点に適用した。解析には御嶽山周辺の名古屋大学、気象庁、Hi-net、長野県の定常観測点の連続データ3成分を用いた。年代によってかなり観測点数が異なるが、2006年頃でも最大9点(NU.KID1, NU.MKO1, NU.MUR, NU.TKN1, V.ONTA, V.ONTN, N.KADH, TKGS, ROPW)の観測点データが使えた。テンプレート地震としては図1に示した224個の地震を用いた。
<<結果>>
1. 御嶽山山頂直下での地震活動は日頃は低調であるが、時々集中的に深さ3kmより浅部で活発化することがあり、その活動が1週間以上連続したのは2007年と2014年の噴火前だけであった。
2.2015年7月中旬から9月にかけて領域Dで深さ10km前後の活動が活発化した。このとき気象庁田の原観測点では火山性地震が38回観測、継続時間3分の火山性微動も1回観測され、傾斜計も僅かに山上がりを示すなど、火山活動との関連性を示唆する現象が観測されている。領域Dでの活動は2007年の噴火前の地震活動でも見られた。このときの活動も2ヶ月程度続き、その後領域BやCでの群発的な活動が発生している。これらの深さは長野県西部地震の余震活動から見えた反射面の深さ(Inamori et al, 1992)ともよく一致することから、領域D付近が深部から流体上がり口で、そこから上がってきた流体がすでに流路ができているところでは地震を起こさず流路がないところでは群発的に地震を発生しながら広がっているようにも見える。2006年以前についてはデジタル記録がそろわないためMatched Filter法を用いた解析ができないが、気象庁の震源情報によると1988年や1993年頃にも活発化しているようである。ただし2000年以前のこの付近の震源決定精度はあまり良くない。
3. さらに深部の深さ30-35kmの地震については2010年2月3日19時代に極めて活発な活動があった。その他の時期についてはパラパラと活動があることはわかったが、あまり相関がよくない。現在テンプレートが2010年と2015年の活動の5イベントしかなく、毎回活動の場所が少しずつ異なっていることを意味しているのかもしれない。気象庁の震源情報をみると2002年8月にも深さは22-30kmとやや浅めであるが群発的に発生している。
 今後これらの活動についても調べ、御嶽山山頂周辺のやや深い地震の活動と噴火活動、群発地震との関係を明らかにしたい。



図1 御嶽山山頂周辺の地震活動(テンプレート地震)。赤星と太い線の長方形は1984年長野県西部地震の震央と断層の位置を示す。グレーの四角は観測点、オレンジ色のハッチは群発地震発生域を示す。