11:00 AM - 11:15 AM
[S09-24] Low-frequency tremors activity immediately after the 2003 Tokachi-oki earthquake (M 8.0) detected by offshore aftershock observation
太平洋プレートが北米プレートの下に沈み込んでいる北海道南方沖のプレート境界浅部では、0.01 – 0.1 Hzの帯域で卓越する超低周波地震 (Very Low Frequency Earthquake, VLFE) や2 – 8 Hzの帯域で卓越する低周波微動 (Low Frequency Tremor) などのスロー地震が観測されている。低周波微動は、日本海溝海底地震津波観測網 (S-net) の運用が始まった2016年以降初めて検出 (Nishikawa et al., 2019; Tanaka et al., 2019) され、Kawakubo et al. (JpGU, 2021) は2006 – 2007年に同海域で設置されていた海底地震計の観測データの再解析によって、2016年以降の活動と同じ場所で微動が発生していたことが明らかにされた。一方、2006 – 2007年の活発化の時間間隔は2 – 4ヶ月と、2016年以後のS-netで観測される微動活動の活発化が1年間隔であるのに対して短い。こうした活動度の違いはVLFEにも認められ (Baba et al., 2020)、その背景には、この領域で発生していた2003年十勝沖地震 (M 8.0) の余効すべり (Itoh et al., 2019) があると考えられる (Kawakubo et al., JpGU, 2021)。そこで、本研究では2003年十勝沖地震直後の期間の低周波微動の活動を、自己浮上式海底地震計による余震観測 (Shinohara et al., 2004; Machida et al., 2009) で得られた地震波形連続記録を用いて解析した。この期間中、VLFEの活動が非常に活発であったことが知られており (Asano et al., 2008; Baba et al., 2020)、微動も多発していた可能性が高い。このような背景から、本研究では2003年十勝沖地震の直後の余震観測データにエンベロープ相関法(e.g., Ide, 2010)を適用し、微動の検出と震源決定を試みた。
本研究でデータを解析した余震観測は、気象庁、東京大学、九州大学、北海道大学、海洋研究開発機構、東北大学の共同観測として実施され、2003年10月1日から11月20日までの期間に、本震の破壊域周辺に広帯域地震計1台と短周期地震計28台が展開された。10月20日には短周期地震計が追加投入され、11月20日までの間は計37台による観測が行われた。本研究では、3成分の波形記録に2 – 8 Hzのバンドパスフィルターを施し、RMS振幅を計算することで3成分を合成し、0.5 Hzのローパスフィルターを適用したのちに1 Hzにリサンプルしたエンベロープ波形を解析に用いる。エンベロープ相関解析 (e.g., Ide, 2010) ではエンベロープ波形を時間窓120秒、オーバーラップ60秒で区切っていき、観測点間の時間窓同士の最大相互相関係数が0.6を超える観測点ペアが10組を超えた場合にイベントを検出したとみなした。
解析の結果、15,475個のイベントが検出され、そのうち震央誤差と時間残差がそれぞれ5 km、3秒以内でかつ、振動継続時間が20秒以上と長く、微動と考えられるイベントは614個であった。検出した微動の多くは十勝沖地震の本震すべり域より浅部側に海溝軸に沿って分布し、S-netの観測で検知されている微動の分布とおおむね一致する。本研究が解析対象としている期間中にAsano et al. (2008) やBaba et al. (2020) により検出されたVLFEは2000個以上あり、数時間から数日の間隔で活発な活動が見られるが、微動と識別・震源決定できたイベント数はVLFEの発生数と比べて非常に少ない。2006-2007年観測やS-net観測により検知された微動活動とVLFEの活動度との間にはよい相関が見られるため、上記の微動の検知数は過小であるように思われる。その原因として、観測網が通常地震の発生域側に偏っていて微動発生域の一部しか覆っていないことのほか、微動活動が非常に活発であるために異なる震源を持つ複数の微動が同時多発的に発生していて、通常のエンベロープ相関法でこれらを区別して検知・震源決定することが困難となっていることも想定される。今後は、検知できた微動の時空間分布を、余震としてすでに震源が決定されている通常地震の分布と詳細に比較するために、走時補正を導入した震源決定を行うとともに、微動の特徴の詳細を議論するために観測点の振幅補正を行って規模を推定し、微動の波形記録の周波数領域での特徴抽出も進める予定である。
本研究でデータを解析した余震観測は、気象庁、東京大学、九州大学、北海道大学、海洋研究開発機構、東北大学の共同観測として実施され、2003年10月1日から11月20日までの期間に、本震の破壊域周辺に広帯域地震計1台と短周期地震計28台が展開された。10月20日には短周期地震計が追加投入され、11月20日までの間は計37台による観測が行われた。本研究では、3成分の波形記録に2 – 8 Hzのバンドパスフィルターを施し、RMS振幅を計算することで3成分を合成し、0.5 Hzのローパスフィルターを適用したのちに1 Hzにリサンプルしたエンベロープ波形を解析に用いる。エンベロープ相関解析 (e.g., Ide, 2010) ではエンベロープ波形を時間窓120秒、オーバーラップ60秒で区切っていき、観測点間の時間窓同士の最大相互相関係数が0.6を超える観測点ペアが10組を超えた場合にイベントを検出したとみなした。
解析の結果、15,475個のイベントが検出され、そのうち震央誤差と時間残差がそれぞれ5 km、3秒以内でかつ、振動継続時間が20秒以上と長く、微動と考えられるイベントは614個であった。検出した微動の多くは十勝沖地震の本震すべり域より浅部側に海溝軸に沿って分布し、S-netの観測で検知されている微動の分布とおおむね一致する。本研究が解析対象としている期間中にAsano et al. (2008) やBaba et al. (2020) により検出されたVLFEは2000個以上あり、数時間から数日の間隔で活発な活動が見られるが、微動と識別・震源決定できたイベント数はVLFEの発生数と比べて非常に少ない。2006-2007年観測やS-net観測により検知された微動活動とVLFEの活動度との間にはよい相関が見られるため、上記の微動の検知数は過小であるように思われる。その原因として、観測網が通常地震の発生域側に偏っていて微動発生域の一部しか覆っていないことのほか、微動活動が非常に活発であるために異なる震源を持つ複数の微動が同時多発的に発生していて、通常のエンベロープ相関法でこれらを区別して検知・震源決定することが困難となっていることも想定される。今後は、検知できた微動の時空間分布を、余震としてすでに震源が決定されている通常地震の分布と詳細に比較するために、走時補正を導入した震源決定を行うとともに、微動の特徴の詳細を議論するために観測点の振幅補正を行って規模を推定し、微動の波形記録の周波数領域での特徴抽出も進める予定である。