11:45 〜 12:00
[S09-27] 海底地震観測による日本海溝中部アウターライズ域のM6クラス正断層地震の震源断層形状
2011年3月の東北沖地震発生以降、日本海溝の海溝軸付近や海溝海側のアウターライズ域では、太平洋プレート内部で発生するアウターライズ正断層地震の活動が活発化している(e.g. Asano et al. 2011)。複数のM7クラスの地震が発生しているのに加え、さらに大規模な地震の発生とそれに伴う津波の被害も懸念されている(e.g. Lay et al., 2011)。日本海溝のアウターライズ域を震源とする正断層地震では、複数の正断層が連動して破壊した事例が、主に余震分布から指摘されている。例えば、1933年昭和三陸地震では、余震分布の再解析や津波記録の検討から、東下がりと西下がりの傾斜方向が異なる2つの正断層が同時に破壊した可能性が指摘されている(Uchida et al., 2016)。また、海底地震計による観測からはM7クラスの地震において2枚の共役な正断層や横ずれ断層に沿って余震が発生している様子が観測されている(Hino et al. 2019, Obana et al., 2013)。ただし、これらの観測は本震発生以降に設置された海底地震計を用いたものであり、本震そのものや、本震直後の余震活動を捉えたものではない。JAMSTECでは、日本海溝中部の海溝軸周辺ならびに海溝海側において、超深海型を含む計45台の海底地震計(OBS)を用いた地震観測を2017年9月から2018年7月にかけて実施したが、観測期間中にM6クラスのアウターライズ地震が3回発生している(2017年9月21日M6.3、10月6日M6.3、11月13日M6.0)。OBSによる記録を用いた解析を行い、これらの地震について本震の破壊開始点や余震分布、震源メカニズムを検討した。特に各地震の本震発生後3日間程度については、連続記録から可能な限り検測を行なった上で解析を実施した。 得られた震源分布からは、いずれの地震も本震発生から約1時間の余震は、本震の破壊開始点を含む10km程度の範囲に限られていることが示された。一方、本震後1時間の余震域と比べると、その後数時間で余震域が断層走向方向に10kmから15km程度拡大していく様子も捉えられている。また、2017年9月の地震では、断層の走向とは直交方向に10kmから15km程度離れたグラーベンでも、本震から数時間以内に活動が活発化している。余震分布は、概ねGlobal CMTによるメカニズム解の走向方向に広がっている。海底地形に見られる正断層によって形成されたグラーベンや、海洋プレート形成時の構造を反映していると考えられる地磁気異常の方向とも一致しており、ホルスト・グラーベンを形成する正断層や、プレート形成時の古い構造に沿ってアウターライズ地震が発生していると考えられる。余震分布は傾斜角45度から70度の傾斜面に沿っており、広角の正断層の活動を示唆している。また、2017年10月の地震では、傾斜角や傾斜方向の異なる複数の面上の余震活動が本震直後から発生しており、M6クラスの地震であっても複数の断層が連動して破壊する可能性を示している。アウターライズ地震による津波を想定する場合、このような複雑な断層面形状も考慮にいれることが必要である。