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[S09P-01] Relation between activity of repeating earthquakes and slip-rate deficit under the Ryukyu Trench–Nanakai Trough
著者らは、さきの研究において、琉球-西南日本弧における1998–2010年の測地データのインバージョンにより琉球海溝-南海トラフにおけるすべり速度欠損の分布を求めた(橋間ほか, 2018, 日本地球惑星科学連合2018年大会)。すべり速度欠損は、南海トラフでは最大8 cm/yrとなり、過去の研究と調和的であった。一方、琉球海溝では、九州南部から南方に向けて負のすべり速度欠損(すべり速度余剰)が増加し、琉球海溝最南部で5 cm/yrに達した。琉球海溝におけるすべり速度余剰はスラブ後退の浅部における表れであり、沖縄トラフの背弧拡大を引き起こすものと考えられる。一方、琉球海溝においては、測地データとは独立に、繰り返し地震によるすべり速度が求められている(Igarashi, 2010, 2020; Igarashi & Kato, 2021)。そこで本研究では、測地データインバージョンによるすべり速度欠損分布を繰り返し地震によって検証する。繰り返し地震のすべり速度データとしては、観測期間を考慮し、Igarashi (2010)のカタログのものを用いた。繰り返し地震によるすべり速度はプレート相対速度に沿った向きであると仮定し、各点におけるプレート相対速度を差し引いてすべり速度欠損とする。プレート相対速度の計算にはNUVEL-1Aモデル(DeMets et al., 1994)を用いた。繰り返し地震によるすべり速度欠損はばらつきが2-3 cm/yrと非常に大きく、琉球海溝の最南部ではすべり速度欠損が3 cm/yrと-10 cm/yrを示す繰り返し地震が近接する例もある。測地データインバージョンのすべり速度欠損は、このばらつきの下限を画するように分布する。両者の解像度の違いを考えると、繰り返し地震によるすべり速度のばらつきは、測地データインバージョンでは捉えられない局所的な固着による影響を受けたものと考えられる。興味深いことに、1911年M8喜界島地震の震源域(後藤, 2013)付近では、測地データインバージョンのすべり速度欠損、繰り返し地震のすべり速度欠損の下限がともに0 – -1 cm/yrとなり、相対的な固着域となっている。一方、両すべり速度欠損分布と計器観測以前の1771年、1791年の〜M8地震の震源域との間に明白な関連は見られなかった。