3:30 PM - 5:00 PM
[S09P-08] Seismicity pattern before and after the 2016 Kumamoto earthquakes
本講演では、平成28年(2016年)熊本地震の起きた布田川・日奈久断層帯周辺の地震活動のパターンについて解析した結果を報告する。2016年4月14日と16日に起きたマグニチュード(M)6.5と7.3の地震は、それぞれ、日奈久断層帯と布田川断層帯で起きた。これらの断層帯周辺では、熊本地震前から一定程度の地震活動はあったが、前者のM6.5地震の後の地震活動や、後者のM7.3地震の後の地震活動は更に活発だった。先行研究(Nanjo et al., 2016, 2019; Nanjo and Yoshida, 2017)では、個々の地震活動のパターンについて議論しているが、本研究ではそれらを総合的にまとめ、熊本地震前後の地震活動のパターンについて議論する。
本解析は、地震活動の時空間分布と、地震の規模別頻度分布を表すグーテンベルグ・リヒター(GR)則(Gutenberg and Richter, 1944)、および余震の減衰様式を表す大森・宇津(OU)則(Utsu, 1961)に基づく。規模の大きい地震と小さい地震の数の比率に相当するGR則のb値は、岩石破壊実験では、差応力に反比例の関係があると示唆され、地球規模の事例でも、その関係を支持する傾向が見られる(Scholz, 1968, 2015)。また、OU則は、大きい地震(本震)の発生直後に増加した小さい地震(余震)の数は時間と共にべき乗で減少することを表す。速度・状態依存摩擦では(Dieterich, 1994)、OU則の冪指数p=1が仮定されているが、応力減少が速いか遅いかにより、p>1やp<1が観測されうる事を示している。
気象庁が維持管理する地震カタログ(一元化震源カタログ)を使用して解析した結果は、以下の様にまとめられる。(1)熊本地震が起きる前は、M6.5とM7.3の地震の震央付近における応力状態は高めであった。熊本地震の一連の活動が開始した後は、布田川・日奈久断層帯に沿った応力は大局的に減少傾向を示した。(2) M7.3地震前のプレスリップや同地震後のアフタースリップが断層帯に沿って起きた事が示唆される。これは、国土地理院のGEONETによる地殻変動の解析結果(Pollitz et al., 2017)や、応力テンソルインバージョン法による、熊本地震の震央周辺の応力場の特徴(防災科学技術研究所, 2016)と調和的である。
GR則を利用した最近の研究から(Gulia and Wiemer, 2019)、大地震後にそれが本震か、または将来に起きる更に大きな本震の前震かを判断するモデルが提案されている。本発表では、上記の熊本地震の結果から示唆されたプレスリップの効果をモデルに取り込む事が、モデルの精度向上になる可能性があると指摘する。
謝辞:本研究では、気象庁一元化震源カタログを使用した。また、日本学術振興会による科研費(20K05050)の助成、中部電力株式会社「原子力に係る公募研究」の助成、東京海上各務記念財団の研究助成、中部大学問題複合体を対象とするデジタルアース共同利用・共同研究IDEAS202111の助成、文部科学省による「災害の軽減に貢献するための地震火山観測研究計画(第2次)」の助成を受けて、本研究の一部を実施した。
本解析は、地震活動の時空間分布と、地震の規模別頻度分布を表すグーテンベルグ・リヒター(GR)則(Gutenberg and Richter, 1944)、および余震の減衰様式を表す大森・宇津(OU)則(Utsu, 1961)に基づく。規模の大きい地震と小さい地震の数の比率に相当するGR則のb値は、岩石破壊実験では、差応力に反比例の関係があると示唆され、地球規模の事例でも、その関係を支持する傾向が見られる(Scholz, 1968, 2015)。また、OU則は、大きい地震(本震)の発生直後に増加した小さい地震(余震)の数は時間と共にべき乗で減少することを表す。速度・状態依存摩擦では(Dieterich, 1994)、OU則の冪指数p=1が仮定されているが、応力減少が速いか遅いかにより、p>1やp<1が観測されうる事を示している。
気象庁が維持管理する地震カタログ(一元化震源カタログ)を使用して解析した結果は、以下の様にまとめられる。(1)熊本地震が起きる前は、M6.5とM7.3の地震の震央付近における応力状態は高めであった。熊本地震の一連の活動が開始した後は、布田川・日奈久断層帯に沿った応力は大局的に減少傾向を示した。(2) M7.3地震前のプレスリップや同地震後のアフタースリップが断層帯に沿って起きた事が示唆される。これは、国土地理院のGEONETによる地殻変動の解析結果(Pollitz et al., 2017)や、応力テンソルインバージョン法による、熊本地震の震央周辺の応力場の特徴(防災科学技術研究所, 2016)と調和的である。
GR則を利用した最近の研究から(Gulia and Wiemer, 2019)、大地震後にそれが本震か、または将来に起きる更に大きな本震の前震かを判断するモデルが提案されている。本発表では、上記の熊本地震の結果から示唆されたプレスリップの効果をモデルに取り込む事が、モデルの精度向上になる可能性があると指摘する。
謝辞:本研究では、気象庁一元化震源カタログを使用した。また、日本学術振興会による科研費(20K05050)の助成、中部電力株式会社「原子力に係る公募研究」の助成、東京海上各務記念財団の研究助成、中部大学問題複合体を対象とするデジタルアース共同利用・共同研究IDEAS202111の助成、文部科学省による「災害の軽減に貢献するための地震火山観測研究計画(第2次)」の助成を受けて、本研究の一部を実施した。