15:30 〜 17:00
[S09P-13] 南海トラフで発生する浅部超低周波地震活動の走向方向の変化の定量解析
南海トラフの巨大地震発生域の浅部側では浅部スロー地震活動が確認されている.浅部スロー地震は,プレート境界のすべり欠損速度(あるいはせん断応力変化)が大きい領域の周囲かつ地震波速度の低速度帯で活発な傾向がある(例えば,Tonegawa et al., 2017; Baba, Takemura et al., 2020).そのため,浅部スロー地震活動は,プレート境界浅部の摩擦強度などの指標となると考えられている.武村・他(2021,JpGU)では,紀伊半島南東沖において高精度かつ長期的な浅部超低周波地震カタログを構築し,古銭洲海嶺の西端で特に活発であることを示した.本研究では,武村・他(2021, JpGU)の手法を室戸岬沖と紀伊水道沖の浅部超低周波地震活動へも適用することで,南海トラフの浅部超低周波地震活動の走向方向の変化とその原因を明らかにすることを目的とする.
広帯域地震観測網F-netの連続記録に対してTakemura, Noda et al. (2019)の手法を適用し,浅部超低周波地震の検知および震央再推定を行った.OpenSWPC(Maeda et al., 2017)の相反定理モードを用いて0.025º毎の仮想震源格子上,プレート境界型の逆断層のメカニズム,6秒のKüpper関数のシミュレーション波形を大量に作成した.震央位置は再推定した位置,深さはJIVSM(Koketsu et al., 2012)のプレート境界に固定した.浅部超低周波地震のモーメントレート関数が,6秒のKüpper関数の重ね合わせで記述できると仮定し,焼き鈍し法により推定した.
2004年4月から2021年3月の解析期間中、室戸岬沖と紀伊水道沖において483個の浅部超低周波地震を検知した.これらの浅部超低周波地震活動のうち,観測波形との一致度VR 30%以上のもののみで計算した積算モーメントは5.5×1017 Nmであり,Takemura, Matsuzawa et al. (2019)のCMTカタログの積算モーメントの3.6倍程度である.この差は,相互相関解析とモーメントレート関数の詳細推定により,小さいサイズのイベントあるいはサブイベントまで網羅的にモデル化できたことに起因する.再推定した震央位置は,Takemura, Noda et al. (2019)と同様に,30 km四方程度の狭い領域で集中的に発生していた.Yokota & Ishikawa (2020)により,2009年および2018年頃に室戸岬沖から紀伊水道沖にかけてMw 6.5程度の浅部スロースリップ(SSE)が検知されており,浅部SSE中に室戸岬沖から紀伊水道沖への浅部超低周波地震の活動域の移動が確認された.浅部SSE期間の浅部超低周波地震による積算モーメントはそれぞれ1.6×1017および1.4×1017 Nmと,浅部SSEの地震モーメントの1~5 %程度である.深部短期的SSE(以下、単に深部SSE)と同期間に発生した深部超低周波地震の積算モーメントも,深部SSEのモーメント1 %以下と報告されている(Ito et al., 2009).
発表では,本研究で構築した室戸岬沖と紀伊水道沖の浅部超低周波地震カタログと武村・他(2021, JpGU)の結果を合わせることで,超低周波地震活動の走向方向の変化を詳細に議論する.
謝辞 防災科学技術研究所F-net(https://doi.org/10.17598/NIED.0005)の波形記録を利用しました.地震波伝播シミュレーションに東京大学情報基盤センターのOakforest-PACSを利用しました。本研究は、JSPS科研費21K03696により実施されました。
広帯域地震観測網F-netの連続記録に対してTakemura, Noda et al. (2019)の手法を適用し,浅部超低周波地震の検知および震央再推定を行った.OpenSWPC(Maeda et al., 2017)の相反定理モードを用いて0.025º毎の仮想震源格子上,プレート境界型の逆断層のメカニズム,6秒のKüpper関数のシミュレーション波形を大量に作成した.震央位置は再推定した位置,深さはJIVSM(Koketsu et al., 2012)のプレート境界に固定した.浅部超低周波地震のモーメントレート関数が,6秒のKüpper関数の重ね合わせで記述できると仮定し,焼き鈍し法により推定した.
2004年4月から2021年3月の解析期間中、室戸岬沖と紀伊水道沖において483個の浅部超低周波地震を検知した.これらの浅部超低周波地震活動のうち,観測波形との一致度VR 30%以上のもののみで計算した積算モーメントは5.5×1017 Nmであり,Takemura, Matsuzawa et al. (2019)のCMTカタログの積算モーメントの3.6倍程度である.この差は,相互相関解析とモーメントレート関数の詳細推定により,小さいサイズのイベントあるいはサブイベントまで網羅的にモデル化できたことに起因する.再推定した震央位置は,Takemura, Noda et al. (2019)と同様に,30 km四方程度の狭い領域で集中的に発生していた.Yokota & Ishikawa (2020)により,2009年および2018年頃に室戸岬沖から紀伊水道沖にかけてMw 6.5程度の浅部スロースリップ(SSE)が検知されており,浅部SSE中に室戸岬沖から紀伊水道沖への浅部超低周波地震の活動域の移動が確認された.浅部SSE期間の浅部超低周波地震による積算モーメントはそれぞれ1.6×1017および1.4×1017 Nmと,浅部SSEの地震モーメントの1~5 %程度である.深部短期的SSE(以下、単に深部SSE)と同期間に発生した深部超低周波地震の積算モーメントも,深部SSEのモーメント1 %以下と報告されている(Ito et al., 2009).
発表では,本研究で構築した室戸岬沖と紀伊水道沖の浅部超低周波地震カタログと武村・他(2021, JpGU)の結果を合わせることで,超低周波地震活動の走向方向の変化を詳細に議論する.
謝辞 防災科学技術研究所F-net(https://doi.org/10.17598/NIED.0005)の波形記録を利用しました.地震波伝播シミュレーションに東京大学情報基盤センターのOakforest-PACSを利用しました。本研究は、JSPS科研費21K03696により実施されました。