15:30 〜 17:00
[S09P-17] 熊野灘における超低周波地震の時空間分布 ―2020年12月から2021年1月の活動―
南海トラフ沈み込み帯は、M8級の巨大地震が繰り返し発生する領域として知られ、現在も強く固着していると考えられている。通常の地震活動はその多くがプレート内地震である一方で、プレート境界では、さまざまな時定数を持つスロー地震活動が観測されている。スロー地震活動は強い固着域と安定滑り域の遷移域で発生すると考えられるため、それらの時空間分布を把握することは、プレート間固着状態をモニターする上で重要である。
2020年12月から2月にかけて、熊野灘のトラフ軸近傍においてスロースリップが発生した(例えば、Araki et al., 2021JpGU)。我々は、DONET広帯域地震計記録により、このスロースリップの活動期間中において、周期10~20秒の波が卓越する浅部超低周波地震(以下、VLFE)の発生を確認した。これらVLFE活動の時空間変化を調べるため、DONET波形記録の目視によるVLFE活動の検出と震源決定、発震機構解の推定を実施した。解析にはNakano et al. (2008)によるSWIFTを適用し、Nakano et al. (2018)と同様に、海域の1次元速度構造を仮定したグリーン関数を用いた。この解析により、合計736個のVLFEの震源位置と発震機構解を推定した。
推定したVLFEのうち、M3以上、かつ3観測点以上、上下動成分最低1つを含む5成分以上の波形データを利用でき、Variance reductionが0.3以下となったものは、290個である。これらを用いて、今回の活動の検討を行った。 まず、活動域の平均的なプレート境界形状である走向240度、傾斜角6度の逆断層を仮定した発震機構解と比較すると、2つの発震機構解の間の最小回転角を示すKagan角が30°以内となるものが大半であることから、VLFE活動の多くは低角逆断層型のプレート境界上の活動と解釈した。次に時空間分布を検討した。今回のVLFE活動には、2段階の空間発展がみられる。第一段階として、12月6日の夜にDONET1のBノード付近からVLFE活動が開始したが、この活動は3日間の活動を経て数日低調となった。この活動域は2015年10月におけるVLFE活動域とほぼ同じである(Nakano et al., 2018; Toh et al., 2020)。その後第二段階として、12月11日から、VLFEはBノードからみてトラフ軸平行方向南西側に位置するDノード付近、およびDノードの南東、トラフ軸近傍に位置するCノード付近まで活動域を拡大し、1月中旬まで活動は継続した。時空間分布からは、第一段階・第二段階ともにトラフ軸平行方向に活動域が広がっている様子が見られ、拡大速度は第二段階のほうが第一段階よりも速いようにみえる。また、第二段階の活動と領域が同じ2016年4月に観測されたVLFE活動(Nakano et al., 2018)においても、逆方向への拡大であるものの第二段階と同程度の拡大速度での空間発展がみられる。このことから、活動域の時空間拡大の速度は場所によって一定である可能性が考えらえる。また、12月28日にはRapid tremor reversal(RTR; Houston et al., 2011)が発生したように見える。
孔内観測による間隙水圧変化からは、スロースリップ現象は2021年2月中旬まで継続したようにみえる。一方で、2021年1月18日以降は、発震機構解の推定に十分なデータ数をもつVLFE活動は確認されていない。ただし、1~2観測点の波形記録においてVLFE活動が確認される例が、特にCノード付近で1月5日から2月2日まで確認される。このことから、スロースリップ活動の後半では、トラフ軸近傍において小規模なVLFEが発生していた可能性がある。
2020年12月から2月にかけて、熊野灘のトラフ軸近傍においてスロースリップが発生した(例えば、Araki et al., 2021JpGU)。我々は、DONET広帯域地震計記録により、このスロースリップの活動期間中において、周期10~20秒の波が卓越する浅部超低周波地震(以下、VLFE)の発生を確認した。これらVLFE活動の時空間変化を調べるため、DONET波形記録の目視によるVLFE活動の検出と震源決定、発震機構解の推定を実施した。解析にはNakano et al. (2008)によるSWIFTを適用し、Nakano et al. (2018)と同様に、海域の1次元速度構造を仮定したグリーン関数を用いた。この解析により、合計736個のVLFEの震源位置と発震機構解を推定した。
推定したVLFEのうち、M3以上、かつ3観測点以上、上下動成分最低1つを含む5成分以上の波形データを利用でき、Variance reductionが0.3以下となったものは、290個である。これらを用いて、今回の活動の検討を行った。 まず、活動域の平均的なプレート境界形状である走向240度、傾斜角6度の逆断層を仮定した発震機構解と比較すると、2つの発震機構解の間の最小回転角を示すKagan角が30°以内となるものが大半であることから、VLFE活動の多くは低角逆断層型のプレート境界上の活動と解釈した。次に時空間分布を検討した。今回のVLFE活動には、2段階の空間発展がみられる。第一段階として、12月6日の夜にDONET1のBノード付近からVLFE活動が開始したが、この活動は3日間の活動を経て数日低調となった。この活動域は2015年10月におけるVLFE活動域とほぼ同じである(Nakano et al., 2018; Toh et al., 2020)。その後第二段階として、12月11日から、VLFEはBノードからみてトラフ軸平行方向南西側に位置するDノード付近、およびDノードの南東、トラフ軸近傍に位置するCノード付近まで活動域を拡大し、1月中旬まで活動は継続した。時空間分布からは、第一段階・第二段階ともにトラフ軸平行方向に活動域が広がっている様子が見られ、拡大速度は第二段階のほうが第一段階よりも速いようにみえる。また、第二段階の活動と領域が同じ2016年4月に観測されたVLFE活動(Nakano et al., 2018)においても、逆方向への拡大であるものの第二段階と同程度の拡大速度での空間発展がみられる。このことから、活動域の時空間拡大の速度は場所によって一定である可能性が考えらえる。また、12月28日にはRapid tremor reversal(RTR; Houston et al., 2011)が発生したように見える。
孔内観測による間隙水圧変化からは、スロースリップ現象は2021年2月中旬まで継続したようにみえる。一方で、2021年1月18日以降は、発震機構解の推定に十分なデータ数をもつVLFE活動は確認されていない。ただし、1~2観測点の波形記録においてVLFE活動が確認される例が、特にCノード付近で1月5日から2月2日まで確認される。このことから、スロースリップ活動の後半では、トラフ軸近傍において小規模なVLFEが発生していた可能性がある。