日本地震学会2021年度秋季大会

講演情報

C会場

一般セッション » S10. 活断層・歴史地震

AM-2

2021年10月16日(土) 11:00 〜 12:15 C会場 (C会場)

座長:石村 大輔(東京都立大学)、白濱 吉起(産業技術総合研究所)

11:00 〜 11:15

[S10-01] 表面照射年代測定を用いた野坂・集福寺断層帯集福寺断層の左横ずれ変位速度の推定

〇白濱 吉起1 (1.産業技術総合研究所 地質調査総合センター 活断層火山研究部門活断層調査研究グループ)

野坂・集福寺断層帯集福寺断層は北西―南東方向に約10 km延びる左横ずれ断層である.本研究では,文部科学省委託事業「活断層評価の高度化.効率化のための調査」の一環として集福寺断層の左横ずれ変位速度の解明を試みた.集福寺断層に沿う滋賀県長浜市沓掛地区周辺において,沓掛面と呼ばれる河成段丘が分布する.それらを下刻する小河谷には,断層を横切る箇所において系統的な左横ずれ変位が認められる.
まず,沓掛面や周辺の山岳地形や変動地形を把握するため,断層に沿う長さ4 km、幅1.5 kmの範囲を対象に航空レーザー測量を実施し,数値地形データ(1 mメッシュ)を作成した.地形データを元にした判読の結果,沓掛面を下刻する河川に約100 mの系統的な左横ずれ変位が確認された.また,沓掛面を構成する沓掛砂礫層及び基盤の花崗岩の分布や変形を把握するため,断層周辺の踏査を行った.結果,沓掛砂礫層が断層の両側に分布していることが確認され,沓掛面が離水して以降の変位が蓄積されていることが明らかとなった.したがって,沓掛面の離水年代が得られれば,平均変位速度が推定できる.
沓掛面は地形学的には高位面相当との分類がなされているものの,これまで定量的な編年は試みられていない.そこで,被覆層中の火山灰分析,表面照射年代測定,ESR年代測定を実施した.まず,沓掛面上においてピット掘削を行い,段丘堆積物とその被覆層を採取した.被覆層について火山灰分析を行った結果,姶良Tn火山灰が検出されたものの,高位面相当に対応するそれより古い広域テフラは確認できなかった.被覆層と段丘堆積物について表面照射年代測定を行い,得られた宇宙線生成核種蓄積量を分析した結果,予察的な結果として,後期更新世以前に離水したことが推定された.ここから求められる平均変位速度は集福寺断層の活動度がB級以下であること示唆している.本発表では,表面照射年代測定やESR年代測定の結果を元に沓掛面の地形発達過程と離水年代について議論し,平均変位速度について考察する.