The 2021 SSJ Fall Meeting

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Room C

Regular session » S10. Active faults and historical earthquakes

AM-2

Sat. Oct 16, 2021 11:00 AM - 12:15 PM ROOM C (ROOM C)

chairperson:Daisuke Ishimura(Tokyo Metropolitan University), Yoshiki Shirahama(AIST)

12:00 PM - 12:15 PM

[S10-05] Damage seismic intensity distribution and damage due to the 1944 Tonankai earthquake in Suwa area

〇Karan Okuyama1, Kotoe Uchiyama, Daisuke Hirouchi2 (1.Shinshu University Education grad school, 2.Shinshu University)

1.はじめに
 地震の被害やゆれの大きさは地盤条件などに大きく左右されるため(武村,2003),その場所の地盤特性とゆれの関係を事前に調べ備えることが重要である。特に過去の地震時における地形条件とゆれの関係は,将来起こり得る地震の被害予測にダイレクトに関わることから,詳細な調査が必要である。例えば1995年兵庫県南部地震で甚大な被害が出た“震災の帯”における被害差については,地質,地盤特性が及ぼす影響について検討されている(石川ほか,2000)。昭和19年東南海地震は12月7日に三重県志摩半島沖(遠州灘)を震源として発生し,震央から遠く離れた諏訪市で最大震度6を記録し異常震域として発表された(中央気象台,1945)。これは諏訪地域の歴史上で最も大きい地震であるが,戦時中であったことから詳細な公的記録はほとんどなく被害の全貌は確認できない。そこで本研究では,昭和19年東南海地震が諏訪地域でどのような被害をもたらしたのかを復元し,詳細震度分布と被害を明らかにすることを目的とし,地形条件と関連づけて被害差の要因について考察する。

2.研究方法
 本研究では,まず1947年米軍撮影の空中写真を用いて地形判読を行い,地形分類図を作成した。その後,岡谷市・下諏訪町・諏訪市の3市町で当時の新聞や学校日誌等の資料収集を行った。また3市町の80歳以上の全員にアンケートを送付し,有効な回答者に対してヒヤリング調査を行った。ヒヤリングでは,当時の地図や空中写真を使いながら,地震時の行動や被害情報を位置情報を含め詳細に収集し地図化した。さらに被害の様子を気象庁震度階級関連解説表に基づいて震度に直して数値化してプロットし,GISを用いて地形分類図と重ねて分析を試みた。

3.諏訪地域で新たに明らかになった被害
 今回の調査によってこれまでにない精度と密度で諏訪地域における震度分布や被害の詳細が明らかになった。
1 岡谷市:諏訪湖沿岸の岡谷東高校では,校庭が凹凸になるほどの地盤被害が明らかになった。また諏訪湖畔から離れた建物でも壁に亀裂が入るなど大きな被害が確認できた。諏訪湖西岸湊地区の湊小学校では,液状化被害が確認された。
2 下諏訪町:諏訪湖沿いの赤砂地区で庭の地割れ被害が認められた。一方,ヒヤリングでは高木・大門地区では目立った被害は確認できなかった。
3 諏訪市:上諏訪駅の西側で建物のガラスが割れるなどの証言があり大きな被害があった一方で,東側はほとんど揺れを感じなかった・電灯がゆれただけという証言もあり,ゆれの強さや被害は場所によって大きな差がみられた。特に旧村部である豊田地区では家屋が潰れ,2階が1階になる被害が確認できた。

4.震度分布と地形との関係
 諏訪地域における震度推定から,岡谷市や下諏訪の諏訪湖沿岸及び諏訪市の豊田地区付近で最大震度6程度であることが明らかとなった。また地形条件と震度の関連では,震度6のゆれは埋立地,自然堤防,後背湿地に分類されることが多い。また段丘や扇状地等では震度4~5程度と比較的小さくなることが多い。埋立地,自然堤防では液状化が確認され,後背湿地でも諏訪湖沿岸の下諏訪の赤砂,諏訪市南部の上川付近で液状化と思われる地面の亀裂等の被害を確認した。本調査は諏訪市で未だ継続中であり,今後地点数を増やして更なる検討を行う予定である。一方当時は住宅がなかった場所での被害を明らかにすることが難しいなどの課題や.被害は建物の構造や強度も影響する。今後のアンケートとヒヤリング調査でデータの数を増やし,さらに詳細な分析をおこなっていく。

引用文献
石川浩次・細矢卓志ほか(2000):地震災害と地形・表層地形・地盤特性―“震災の帯”の中の被害差の原因についてー.第四紀研究39
武村雅之 (2003):『関東大震災 大東京圏の揺れを知る』.鹿島出版会
中央気象台(1945):『昭和十九年十二月七日東南海地震調査概報』.中央気象臺