3:30 PM - 5:00 PM
[S10P-01] Gravity anomaly analyses of the Chojagahara and Yoshii faults
・はじめに
長者ヶ原―芳井断層は,広島県南東部から岡山県南西部にかけて北東-南西走向の右横ずれ断層で,神辺平野から南西に延びる長者ヶ原断層と北東に延びる芳井断層から構成される(地震調査委員会, 2016).両断層の間隔は最大約3 kmであるが,地下の断層構造の連続性については明らかではない.本研究では長者ヶ原―芳井断層周辺で重力測定を実施し,重力異常データの解析から得られた長者ヶ原―芳井断層の断層構造について報告する。
・データおよび解析方法
長者ヶ原―芳井断層周辺地域において、2020年9月13日〜19日と2020年11月29日〜12月5日に,計212点の重力測定を実施した.使用した重力計は金沢大学所有のScintrex社製CG-3M型重力計である.測定点の緯度,経度および標高は,GNSSにより決定した.解析には金沢大学既存重力データに加え,国土地理院(2006),Yamamoto et al. (2011),産業総合技術研究所地質調査総合センター(2013) の重力データを使用した.地形補正とブーゲー補正に用いる仮定密度は,産総研(2009) が岡山地域でABIC最小化法により求めた2550 kg/m3 を使用した.重力データは通常の補正に加え,10mDEMによる地形補正,ローパスフィルター処理,トレンドの除去を行った.この重力異常に対して重力勾配テンソル解析を行い,水平一次微分(HD),鉛直一次微分(VD),鉛直一次微分で正規化した水平一次微分(TDX), 次元指数(Di)を計算した(楠本, 2015; Hiramatsu et al., 2019).また,神辺平野の断層を横断する測線で二次元タルワニ法による密度構造解析を行った.
・結果と考察
長者ヶ原―芳井断層周辺でのHD, VD, TDX の分布は,それほど明瞭ではないものの,概ね両断層に沿ってHDとTDXの高い値やVDのゼロ等値線が見られ,地下の断層構造を反映したものと考えられる.広域の解析結果からは神辺平野内ではそのような特徴的な分布は確認できなかったが,神辺平野周辺に範囲を限定した解析では断層沿いにTDXの高い値が分布するようにも見える.両断層上では概ねDi < 0.5であり,二次元的な地下構造を示す.一方,芳井断層と神辺平野の断層の間ではDi > 0.5となり,地下の断層構造の不連続性が示唆される.神辺平野の断層を横断する測線での二次元タルワニ法による密度構造解析からは,地下約400 mに鉛直変位量60 mの断層構造を仮定した場合に観測された重力異常値が再現されることが示された.
・謝辞
本研究では,国土地理院,Yamamoto et al. (2011),産業総合技術研究所地質調査総合センターによる重力データを使用しました.現地での重力測定では,金沢大学の稲生健人,深田雅人,山本史に協力いただいた。記して感謝します.
長者ヶ原―芳井断層は,広島県南東部から岡山県南西部にかけて北東-南西走向の右横ずれ断層で,神辺平野から南西に延びる長者ヶ原断層と北東に延びる芳井断層から構成される(地震調査委員会, 2016).両断層の間隔は最大約3 kmであるが,地下の断層構造の連続性については明らかではない.本研究では長者ヶ原―芳井断層周辺で重力測定を実施し,重力異常データの解析から得られた長者ヶ原―芳井断層の断層構造について報告する。
・データおよび解析方法
長者ヶ原―芳井断層周辺地域において、2020年9月13日〜19日と2020年11月29日〜12月5日に,計212点の重力測定を実施した.使用した重力計は金沢大学所有のScintrex社製CG-3M型重力計である.測定点の緯度,経度および標高は,GNSSにより決定した.解析には金沢大学既存重力データに加え,国土地理院(2006),Yamamoto et al. (2011),産業総合技術研究所地質調査総合センター(2013) の重力データを使用した.地形補正とブーゲー補正に用いる仮定密度は,産総研(2009) が岡山地域でABIC最小化法により求めた2550 kg/m3 を使用した.重力データは通常の補正に加え,10mDEMによる地形補正,ローパスフィルター処理,トレンドの除去を行った.この重力異常に対して重力勾配テンソル解析を行い,水平一次微分(HD),鉛直一次微分(VD),鉛直一次微分で正規化した水平一次微分(TDX), 次元指数(Di)を計算した(楠本, 2015; Hiramatsu et al., 2019).また,神辺平野の断層を横断する測線で二次元タルワニ法による密度構造解析を行った.
・結果と考察
長者ヶ原―芳井断層周辺でのHD, VD, TDX の分布は,それほど明瞭ではないものの,概ね両断層に沿ってHDとTDXの高い値やVDのゼロ等値線が見られ,地下の断層構造を反映したものと考えられる.広域の解析結果からは神辺平野内ではそのような特徴的な分布は確認できなかったが,神辺平野周辺に範囲を限定した解析では断層沿いにTDXの高い値が分布するようにも見える.両断層上では概ねDi < 0.5であり,二次元的な地下構造を示す.一方,芳井断層と神辺平野の断層の間ではDi > 0.5となり,地下の断層構造の不連続性が示唆される.神辺平野の断層を横断する測線での二次元タルワニ法による密度構造解析からは,地下約400 mに鉛直変位量60 mの断層構造を仮定した場合に観測された重力異常値が再現されることが示された.
・謝辞
本研究では,国土地理院,Yamamoto et al. (2011),産業総合技術研究所地質調査総合センターによる重力データを使用しました.現地での重力測定では,金沢大学の稲生健人,深田雅人,山本史に協力いただいた。記して感謝します.