9:00 AM - 9:15 AM
[S15-12] Inhomogeneous structure in the crust of the Kyushu region by seismic tomography
震源決定や震源インバージョンなど地震の震源域に関する解析の多くは1次元構造によるものであり、基盤岩における不均質構造は考慮されていない。震源情報や強震動予測の精度を考慮するにあたり、基盤岩の不均質を考慮する必要性があるか否か検証しておくことは重要であると考えられる。
これまでに幾つかの大爆破の観測等により基盤岩における構造推定が試みられているが、基盤岩内部の不均質を推定できるほどその数は多くない。VJMA2001、JIVSMなど幾つかの速度構造モデルが提案されているが、いずれも情報量の少ない中で構築されていると考えられる。構造探査は波動の発生のし易さからP波が用いられるが、工学的に重要なS波に対してはほとんど行われていない。特に大深度においてはS波の構造探査は行えないのが実情である。一方、現時点までに観測された自然地震に関する走時情報は相当量蓄積されている。そこでこの走時情報を用いて、九州地方を対象としたP波およびS波の地震波トモグラフィーを実施し、基盤岩の速度不均質に関する検討を行った。
北緯32.1~34.0°、東経129.4~131.9°、深さ0~20 kmで発生した地震を対象として、Hi-net検測値データに、強震観測網(K-net)の連続観測データからP、S波走時を読み取った走時データを追加した。別途、北朝鮮で実施された核実験の表面波位相速度およびモホ面を伝わったと考えられる地震波速度を用いた逆解析を行って、地表からモホ面までの大局的な速度構造を求めた。これをトモグラフィー解析のための初期モデルとしてhypomhプログラム(Hirata and Matsu’ura, 1987)を用いた震源決定を行い観測点補正量を推定するとともに、①解の収束条件を満たさなかった地震、②データ数が10未満の地震、を除いた初動走時をトモグラフィーに用いるデータセットとした。その結果、地震数は79375地震、観測点数はHi-net、気象庁、大学で95点、K-NET62地点となった。また、走時数はP波が1130862、S波が1149210個である。
解析にはFMTOMO(Rawlinson et al, 2006)を用い、北緯32.0~34.1°、東経129.3~132.0°の範囲を水平方向のグリッド間隔を0.1°刻みとして与えた。鉛直方向に関しては、最初は4km間隔とし、解が収束した段階で、それを初期モデルとする深さ方向に2km間隔の格子として、深さ方向への分解能の向上を行った。
上記の解析をP波およびS波に対して独立に行った。それぞれ独立に行った解析であるが、それぞれの速度分布の遅速には良い対応関係にあるように見られる。なお、阿蘇火山の直下付近の深さ12~20km付近には周辺に比べ、P波及びS波が周辺に比べてやや遅い速度分布でVp/Vs比がやや小さくなる分布が見られている。Abe et al. (2017)はレシーバー関数の解析および理論計算の対応から、阿蘇の下にS波の低速度領域が存在することを指摘している。トモグラフィーによる低速度分布は、Abe et.al(2017)の結果に対応するものと考えられる。
今後は推定した不均質速度構造の妥当性の検討を3次元差分法により進める予定である。なお、今回行ったトモグラフィー解析では、地震観測点密度により、これ以上の分解能の不均質速度構造を得るのは困難であった。より詳細な不均質を明らかにするためには、地震数を増やすだけではなく、観測点密度を上げることが必要と考えられる。
謝辞:検測データおよび強震波形データは防災科学技術研究所高感度地震観測網(Hi-net)および強震観測網(K-net)に公開されているデータを用いました。記して感謝いたします。また、本研究は、12電力等による共同研究の成果の一部です。
これまでに幾つかの大爆破の観測等により基盤岩における構造推定が試みられているが、基盤岩内部の不均質を推定できるほどその数は多くない。VJMA2001、JIVSMなど幾つかの速度構造モデルが提案されているが、いずれも情報量の少ない中で構築されていると考えられる。構造探査は波動の発生のし易さからP波が用いられるが、工学的に重要なS波に対してはほとんど行われていない。特に大深度においてはS波の構造探査は行えないのが実情である。一方、現時点までに観測された自然地震に関する走時情報は相当量蓄積されている。そこでこの走時情報を用いて、九州地方を対象としたP波およびS波の地震波トモグラフィーを実施し、基盤岩の速度不均質に関する検討を行った。
北緯32.1~34.0°、東経129.4~131.9°、深さ0~20 kmで発生した地震を対象として、Hi-net検測値データに、強震観測網(K-net)の連続観測データからP、S波走時を読み取った走時データを追加した。別途、北朝鮮で実施された核実験の表面波位相速度およびモホ面を伝わったと考えられる地震波速度を用いた逆解析を行って、地表からモホ面までの大局的な速度構造を求めた。これをトモグラフィー解析のための初期モデルとしてhypomhプログラム(Hirata and Matsu’ura, 1987)を用いた震源決定を行い観測点補正量を推定するとともに、①解の収束条件を満たさなかった地震、②データ数が10未満の地震、を除いた初動走時をトモグラフィーに用いるデータセットとした。その結果、地震数は79375地震、観測点数はHi-net、気象庁、大学で95点、K-NET62地点となった。また、走時数はP波が1130862、S波が1149210個である。
解析にはFMTOMO(Rawlinson et al, 2006)を用い、北緯32.0~34.1°、東経129.3~132.0°の範囲を水平方向のグリッド間隔を0.1°刻みとして与えた。鉛直方向に関しては、最初は4km間隔とし、解が収束した段階で、それを初期モデルとする深さ方向に2km間隔の格子として、深さ方向への分解能の向上を行った。
上記の解析をP波およびS波に対して独立に行った。それぞれ独立に行った解析であるが、それぞれの速度分布の遅速には良い対応関係にあるように見られる。なお、阿蘇火山の直下付近の深さ12~20km付近には周辺に比べ、P波及びS波が周辺に比べてやや遅い速度分布でVp/Vs比がやや小さくなる分布が見られている。Abe et al. (2017)はレシーバー関数の解析および理論計算の対応から、阿蘇の下にS波の低速度領域が存在することを指摘している。トモグラフィーによる低速度分布は、Abe et.al(2017)の結果に対応するものと考えられる。
今後は推定した不均質速度構造の妥当性の検討を3次元差分法により進める予定である。なお、今回行ったトモグラフィー解析では、地震観測点密度により、これ以上の分解能の不均質速度構造を得るのは困難であった。より詳細な不均質を明らかにするためには、地震数を増やすだけではなく、観測点密度を上げることが必要と考えられる。
謝辞:検測データおよび強震波形データは防災科学技術研究所高感度地震観測網(Hi-net)および強震観測網(K-net)に公開されているデータを用いました。記して感謝いたします。また、本研究は、12電力等による共同研究の成果の一部です。