日本地震学会2021年度秋季大会

講演情報

ポスター会場(1日目)

一般セッション » S15. 強震動・地震災害

P

2021年10月14日(木) 15:30 〜 17:00 P5会場 (P会場)

15:30 〜 17:00

[S15P-04] 2016年熊本地震の地表断層ごく近傍の強震動について

〇岩城 麻子1、藤原 広行1 (1.防災科学技術研究所)

2016年熊本地震で特に益城町中心部で建物被害が集中したことは広く関心を集めた.断層モデルを用いた強震動評価によって益城町中心部における強震動を断層内の比較的浅い領域に位置する強震動生成域によって説明するモデルが提案されている(例えば,貴堂・他,2019;Somei et al. 2020).
この地震で益城町寺迫から同町広崎町に至る地表断層が新たに確認されており(都市圏活断層地図,2017),益城町中心部で特に甚大な建物被害の集中した地域を通っている.現地調査に基づく詳細な地表断層位置(鈴木・他, 2018)および航空写真・道路走行調査画像判読と建物登記簿調査に基づいた分析により,地表断層から100mの範囲に倒壊建物の約80%が集中しており断層から離れるに従い急激に倒壊率が下がることが報告されている(内藤・他, 2018; 中村・他2018).
この地震について,詳細な地表断層形状を取り入れた断層モデルによる強震動計算により断層近傍の変位分布の再現性が向上することを示しており(岩城・他, 2021),強震動予測における事前情報としての活断層情報の有用性を検討している.しかし,使用した断層モデルにおいて数kmの広がりを持つ強震動生成域や断層浅部の食い違いは地表断層から数100m~数km離れた位置に強い地震動を生じさせるものの,上述したような地表断層から100 m程度以内の集中的な被害を断層モデルで説明するためには,それらに加えて断層内部でさらにスケールの小さい機構が必要である可能性がある. そこで,その機構として地表付近のごく近傍域のみに存在する断層内部領域で生じている地盤変形の影響を考えた.この地盤変形は,観測された地表断層の変位量の断層運動で生じた変位量からの欠損分と仮定すると,地表付近での断層運動による変位を一部打ち消す方向に働く力に相当すると考えることができる.この地盤変形に対応する力として断層ごく近傍の地表付近に体積的な変形を近似的に表現するシングル力をおき,断層モデルと組み合わせた線形の強震動計算による簡単な数値実験により,断層面全体に連続的な食い違い量を持つ断層モデルだけでは説明できない地表断層ごく近傍に集中した強い地震動を生成できることを示した. 実際の建物倒壊率を説明するためには,この変形が建物倒壊に寄与するための力の大きさを地盤の非線形応答も含めて検討する必要がある.