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[S16-06] 表面波分離の基礎的検討と関東平野内の長周期地震動への適用
南海トラフを代表とするM 8~9クラスのプレート境界での巨大地震の発生が危惧される中,関東平野や大阪平野での地震動予測が多く行われている。このときの長周期地震動の計算には主に三次元差分法が用いられ,サイトと震源位置に依存して変化する波動の伝播特性や増幅特性が明らかとなっている。一方,検討対象地点の地震動の増幅特性を把握する際に,どのような表面波が堆積層内を伝播し,増幅するかを調べることは,波動伝播特性を考察するうえで必要である。上林 (2019)は,3次元波動場を波動ポテンシャルによりP,SV,SH波に分離する手法を提案し,簡易的な堆積盆地状の堆積地盤モデルに適用した。提案手法をAL法で得られたP,SV,SH波との比較により検証し,グリッド間隔による波形の精度などの検証を行った。 本研究では、上林 (2019)で示された手法を用いて,簡易的な波動場での波動分離の精度を確認するとともに,3次元差分法に波動分離の式を直接組み込み,プレート境界から生じ関東平野に伝播する長周期地震動の波動分離に適用した。なお,本検討では,SH波(ラブ波)とそれ以外のP・SV波(レイリー波)の分離のみに着目し,水平2方向の波動成分のみを利用している。 最初に,図1,2_aに示すように,平面波の斜め入射場をイメージして水平方向に一定速度で伝播する面外波(SH波)と面内波(SV波)の波動場を擬似的に作成した。この結果,図1,2_b,cに示すように,上記手法で精度よく波動分離が行われていることを確認した。次に,図3,4_aに示すように,解析領域の中心部から同心円状に広がる波動場について,Radial方向,Travsvers方向に振幅を有する波動場を擬似的に作成し,波動分離を試みた。図3,4_b,cに示す結果から,多少の誤差は見られるが,概ね精度よく波動分離が行われていることが分かる。最後に,関東平野を対象領域とし,茨城県沖で生ずる太平洋プレート境界の地震が関東平野における影響を数値計算により評価した。関東平野の堆積層やプレート境界の地盤構造を考慮した地震動評価には三次元差分法[永野(2004)]を利用し,そこに波動分離を組み込んだ。地盤モデルは全国1次地下構造モデルを使用し,最表層は第二層の物性値に置換した。グリッド間隔は250mとした。以上より,計算された速度波形および分離した波形について水平二方向の合成を行い,最大速度を評価した結果を図5に示す。これより,茨城県沖の震源に対しては,関東平野ではレイリー波が卓越して伝播することが分かった。 図の作成にGMTを利用させて頂きました。