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[S16P-02] Classification of shallow subsurface using H/V spectral ratio of microtremor, application example in Koriyama City, Fukushima Prefecture
地表面で観測される地震動は,表層地盤の影響を大きく受けるため,表層地盤の震動特性を把握することは,地震防災上非常に重要である。広域の地震動を推定するために,微地形区分から推定される表層30mまでのS波速度分布(Avs30)が広く用いられている。このAvs30は250mメッシュ内のボーリングデータや微動アレイ探査データから推定されているが,大都市圏においてもこれらのデータ数は必ずしも十分でない。一方,微動の3成分測定から計算されるH/Vスペクトルは,簡便な測定・解析方法であるため,地盤構造モデルの同定解析(松島ほか,2011)や広域の地盤増幅率の推定などに多く利用されている(先名ほか,2018)。我々は,微動H/Vスペクトルの形状をクラスタリング解析よって分類する手法を活用し,表層地盤を分類することを試みている(小西ほか,2021)。本報告では,福島県郡山市において稠密微動観測を実施し,H/Vスペクトルのクラスタリング解析を適用し,表層地盤の分類を行った。郡山盆地は,阿武隈高地と奥羽脊梁山脈に囲まれた内陸盆地であり,脊梁山脈から流出する砂礫が形成した扇状地堆積物と阿武隈川及びその支流群の流域に発達した段丘堆積物から構成されている(倉田・庄司,1995)。微地形分布(J-SHIS)で見ても盆地西側は砂礫質台地,郡山駅の東側で後背湿地や自然堤防,盆地東側は山地と区分され,比較的狭い範囲で地形と地質が異なっており,微動H/Vスペクトルを用いた地盤分類を行うサイトとして適していると判断した。 測定は2020年10月1日~2日(一部2020年10月12日再測定)に行い,3成分の独立型地震探査装置(McSEIS-AT3C)を用いた。観測地点数は317点であり,およそ250m間隔で測定を行った。サンプリング周波数は250Hzであり,観測時間は12分程度である。H/Vの解析は,データを65.536秒に分割し,振幅の大きな上位30%の波形を取り除いて計算した。スペクトルにはバンド幅0.3HzのParzen Windowを施した。水平動のスペクトルは水平2成分のRMS振幅を用いた。フーリエスペクトルの卓越周期の特徴は,既往研究成果の倉田・庄司(1995)によるピーク周期と同様の傾向を示している。 H/Vスペクトルの卓越周波数による分類を行ったところ,郡山駅の西側の砂礫質台地では,卓越周波数が3㎐以下の観測点が多く,自然堤防や旧河道では3-8Hz程度と分類され,阿武隈川西方の後背湿地では3-5㎐程度の卓越周波数を示した。さらに,H/Vスペクトルに対して,機械学習の一つであるMDS(Multi-Dimensional Scaling)を用いた次元低下を行い,各観測点のデータを分類した(小西他,2021)。K-means法により固有値が大きい5つの固有ベクトルを用いて4つのグループに区分した。郡山駅の西側の砂礫質台地では,区分2に区分される地点が大多数を占めた。自然堤防や旧河道では区分3および4に分類され,阿武隈川の西方の後背湿地では区分1に分類されている。卓越周波数による区分と対応を示すことが確認された。ただし,同程度の卓越周波数を有するデータでも形状や最大値などの違いにより異なるクラスに分類され,クラスタリングによる区分の方が微地形区分とよい対応を示した。また,卓越周波数はH/Vスペクトルに複数のピークがある場合や明瞭なピークが無い場合には読み取りにある程度の判断が必要になるため,卓越周波数だけでなく,スペクトル形状による分類も併用することが有効であると考えられる。 参考文献 J-SHIS:地形・地盤分類250mメッシュマップ (2020年更新版), https://www.j-shis.bosai.go.jp/labs/wm2020/. (2021年5月23日閲覧) 小西他(2021):稠密微動測定によるH/Vスペクトルを用いた表層地盤の分類,物理探査学会第144回学術講演会論文集,114-117. 倉田・庄司(1995):郡山市地域表層地盤の微動特性に関する研究,日本大学工学部紀要,36,A,123-138. 松島他(2011):メキシコ盆地における微動観測とその水平上下スペクトル比による地下構造モデルの検証,京都大学防災研究所年報,54B,24-28 先名他(2008):常時微動のH/Vスペクトル比と地形・地盤分類を用いたスペクトル増幅率の推定,日本地震工学会論文集,8 ,4,1-15.