3:30 PM - 5:00 PM
[S16P-04] Microtremor Observation for Numerical Modeling of Subsurface Velocity Structure in the Kochi Plain
地震動評価のための地盤構造調査は全国各地で実施され,地盤構造モデルの構築・更新がなされている。今回対象にした高知平野(狭義の土佐平野)は,北側を四国山地,南側を標高300~400mの山地で囲まれ,南北数km東西20~30km程度で,比較的古い時代の地質で囲まれた小さな平野である。地震基盤(Vs: 3000m/s)相当層上面の深さは200~400m程度[J-SHIS]となっているが,大阪平野や関東平野のような地震基盤で囲まれた明瞭な盆地構造は示されていない。この平野の地形や表層地質,四国南部地域の地質の成因[例えば,産総研(2018)]からは,変化に富んだ複雑な地質・地下構造であることが窺える。高知平野においては,常時微動の単点観測データに基づく表層地盤構造の推定結果[例えば,大石・他(2012)]やボーリングデータ[高知地盤公開情報サイト]が多数存在し, 土質とN値からS波速度に換算するなどのモデルも提案[例えば,山本・他(2010)]されてはいるものの,物理探査データに基づく速度構造情報が整理された事例は限られている[例えば,大堀・他(2013)]。こうした小規模の平野において,地震動評価のための数値モデルの高精度化のために,平野規模や地形の変化具合に見合った密度での面的な速度構造情報の把握は必要なことであると考えられる。
そこで,対象地域の速度構造情報を得ることを目的に,既往の研究成果を参照しながら,2018~2020年にかけて実施した常時微動の観測記録をもとに,微動特性と表層地盤構造について報告する。微動の観測は,高知城付近を通過する土佐平野を南北に縦断する測線(計87点)を設定した。この測線の近隣にはK-NET高知や気象台,自治体震度計の観測点があり,地震動データの活用も可能である。この測線は,平野の北端と南端および中央(高知城付近)で標高が高くなり古い時代の層が露頭する。また,南へは,土佐平野南側の山地を貫き平野の外側の海岸まで測線を伸ばしている。こうした測線は,既存のボーリングデータが複数存在し参照もできる。観測には,ポータブル3成分強震計(SMAR)を用い,各地点で20分程度の収録を実施した。一部の地点は,①同じ位置で数か月毎の複数回の収録,②複数地点での同時収録を実施した。
こうして得られた記録から,水平動/上下動スペクトル比(H/V)を算出した。また,大堀・他(2013)から物性値を引用し,このH/V比の山谷の周期が合うような層厚を求めた。こうして得られた測線下の表層地盤構造の推定し,ボーリングデータによる地質断面図との比較を行った。また,平野中央の岩盤地点の高知城公園での定期的な観測データのフーリエスペクトルからは,常にNS成分が大きくなる傾向が見られ,水平成分記録による粒子軌跡から,その長軸方向はN15~25°W方向となり,この傾向は,ほかの地点では見られない特徴的なものであった。
対象とした平野での常時微動の観測とその分析は,過去にも多くの試みがなされているが,ここで得られた観測記録において,微動特性を提示するとともに,詳細な表層地盤構造の推定に結び付けることによって,既存のものにさらに詳細な速度構造モデルを作成することが可能と考えられる。現在,上記の測線に沿う位置での小規模の微動アレイ観測を実施し,地点毎の速度構造を得ることを試みている,今後,微地形などを考慮した速度構造のモデル化と数値計算等で地盤構造モデルの妥当性などを確認したい。
なお,この報告の内容の一部は,高知大学理学部・理工学部の卒業研究:森有紗氏(2018年度),松園龍汰氏(2019年度),石川晃大氏(2020年度)の成果によるものです。
そこで,対象地域の速度構造情報を得ることを目的に,既往の研究成果を参照しながら,2018~2020年にかけて実施した常時微動の観測記録をもとに,微動特性と表層地盤構造について報告する。微動の観測は,高知城付近を通過する土佐平野を南北に縦断する測線(計87点)を設定した。この測線の近隣にはK-NET高知や気象台,自治体震度計の観測点があり,地震動データの活用も可能である。この測線は,平野の北端と南端および中央(高知城付近)で標高が高くなり古い時代の層が露頭する。また,南へは,土佐平野南側の山地を貫き平野の外側の海岸まで測線を伸ばしている。こうした測線は,既存のボーリングデータが複数存在し参照もできる。観測には,ポータブル3成分強震計(SMAR)を用い,各地点で20分程度の収録を実施した。一部の地点は,①同じ位置で数か月毎の複数回の収録,②複数地点での同時収録を実施した。
こうして得られた記録から,水平動/上下動スペクトル比(H/V)を算出した。また,大堀・他(2013)から物性値を引用し,このH/V比の山谷の周期が合うような層厚を求めた。こうして得られた測線下の表層地盤構造の推定し,ボーリングデータによる地質断面図との比較を行った。また,平野中央の岩盤地点の高知城公園での定期的な観測データのフーリエスペクトルからは,常にNS成分が大きくなる傾向が見られ,水平成分記録による粒子軌跡から,その長軸方向はN15~25°W方向となり,この傾向は,ほかの地点では見られない特徴的なものであった。
対象とした平野での常時微動の観測とその分析は,過去にも多くの試みがなされているが,ここで得られた観測記録において,微動特性を提示するとともに,詳細な表層地盤構造の推定に結び付けることによって,既存のものにさらに詳細な速度構造モデルを作成することが可能と考えられる。現在,上記の測線に沿う位置での小規模の微動アレイ観測を実施し,地点毎の速度構造を得ることを試みている,今後,微地形などを考慮した速度構造のモデル化と数値計算等で地盤構造モデルの妥当性などを確認したい。
なお,この報告の内容の一部は,高知大学理学部・理工学部の卒業研究:森有紗氏(2018年度),松園龍汰氏(2019年度),石川晃大氏(2020年度)の成果によるものです。