3:30 PM - 5:00 PM
[S16P-06] Attempt to search the caldera boundary by microtremor H/V on Satsuma-Iwojima Island
山田ら(2016)は,硫黄島港(以下,港と呼ぶ)および薩摩硫黄島飛行場(以下,飛行場と呼ぶ)において,臨時地震観測によるサイト増幅特性の算定と,常時微動観測(アレイ観測)による地盤モデルの推定を行った.山田ら(2016)によると,港および飛行場の地盤モデルから求めた伝達関数には0.2~0.3Hz付近にピークは見られるものの,それほど明瞭ではなかったことから,サイト増幅特性に見られる0.2~0.3Hz付近の明瞭なピークは盆地構造による3次元的な効果や,地震波の入射方向の効果に起因するものと考えられた.港と飛行場のサイト増幅特性の0.2~0.3Hz付近の共通の特徴から,両地点は深い地盤構造を共有していると推察され,実際のカルデラ構造が従来の解釈より複雑である可能性が示唆された.なお,従来の解釈では,港と飛行場の間にある急崖がカルデラ壁とされ,港はカルデラ内,飛行場はカルデラ外に位置すると考えられている.
そこで,従来の解釈でカルデラ内に位置すると考えられる港とカルデラ外に位置すると考えられる飛行場の間において振動特性の異なるカルデラ境界を探索することを目的として,港と飛行場間の常時微動観測(単点観測)を行った.
常時微動観測は,道路上を基本とし,No.1~No.30の28点(No.11とNo.20は欠測)で行った.サーボ型加速度計(白山工業製JU210)を用いて,各観測点11分間の常時微動観測を行った.常時微動H/Vの算出においては,長周期の波動成分の影響も考慮できるように,各観測点について擾乱の少ない163.84秒間のデータを3区間抽出し,その平均値としている.水平成分は直交する2成分の二乗平均の平方根とした.スペクトルの平滑化については,長周期においてもピークを明瞭に判別できるようにする観点から水平成分,鉛直成分ともにバンド幅0.05HzのParzenウィンドウを用いた. 港では山田ら(2016)において常時微動観測が行われており,7mアレイ(青色●印)の中心点(A071),20mアレイ(緑色●印)の中心点(A201)の結果を用いた.
図-1に観測点を示す.図の左端に飛行場,中央下端に港が位置している.その間に等高線が密になった急崖があり,カルデラ壁と考えられている.観測点No.1,2,3が最も港に近く,No.4からNo.5,6,7,8,9,10を通る西側ルートとNo.30,29,28,27,26,25,24,23,22,21,19,18の東側ルートを設定し,No.12からNo.13,14,15,16,17の順でNo.17が最も飛行場寄りである.西側ルートの一部は険しい獣道で,No.9と12の間にカルデラ壁と考えられる急崖があり,No.10は急崖の中段に位置する.東側ルートは普通乗用車の通行可能な道路で,No22が崖の下,No.18が崖の上,No.21,19が崖を切り崩してできた道上であるため崖の途中と考えられる.
図-1には観測点と対応させて,常時微動H/Vを併記した.また,No.10の常時微動H/Vを左下に拡大して示した.常時微動H/Vのピーク周波数に着目すると,表層の影響と考えられる3Hzより高周波数帯のピークは観測点によって変化するものの,深い地盤構造の影響と考えられる0.3Hz付近の低周波数のピークはすべての観測点において共通にみられた.0.3Hz付近のピークは急崖の上下でも共通に見られ,港と飛行場の間において振動特性が変化する箇所は見つけることはできなかった.
港と飛行場の間にある急崖がカルデラ壁とされ,港はカルデラ内,飛行場はカルデラ外に位置すると考えられているが,深い地盤構造を反映すると考えられる低周波の振動特性が港から飛行場まで連続しており,従来,カルデラ外と考えられている急崖上もカルデラの影響を大きく受けていることがより明瞭となった.山田ら(2016)でも指摘したように,実際のカルデラ構造は従来の解釈より複雑である可能性がより強く示された.
山田ら(2016):薩摩硫黄島における低周波数のピークを有するサイト増幅特性の要因分析,土木学会論文集A1(構造・地震工学),Vol.72,No.4(地震工学論文集第35巻),pp.Ⅰ_691-Ⅰ_699.
そこで,従来の解釈でカルデラ内に位置すると考えられる港とカルデラ外に位置すると考えられる飛行場の間において振動特性の異なるカルデラ境界を探索することを目的として,港と飛行場間の常時微動観測(単点観測)を行った.
常時微動観測は,道路上を基本とし,No.1~No.30の28点(No.11とNo.20は欠測)で行った.サーボ型加速度計(白山工業製JU210)を用いて,各観測点11分間の常時微動観測を行った.常時微動H/Vの算出においては,長周期の波動成分の影響も考慮できるように,各観測点について擾乱の少ない163.84秒間のデータを3区間抽出し,その平均値としている.水平成分は直交する2成分の二乗平均の平方根とした.スペクトルの平滑化については,長周期においてもピークを明瞭に判別できるようにする観点から水平成分,鉛直成分ともにバンド幅0.05HzのParzenウィンドウを用いた. 港では山田ら(2016)において常時微動観測が行われており,7mアレイ(青色●印)の中心点(A071),20mアレイ(緑色●印)の中心点(A201)の結果を用いた.
図-1に観測点を示す.図の左端に飛行場,中央下端に港が位置している.その間に等高線が密になった急崖があり,カルデラ壁と考えられている.観測点No.1,2,3が最も港に近く,No.4からNo.5,6,7,8,9,10を通る西側ルートとNo.30,29,28,27,26,25,24,23,22,21,19,18の東側ルートを設定し,No.12からNo.13,14,15,16,17の順でNo.17が最も飛行場寄りである.西側ルートの一部は険しい獣道で,No.9と12の間にカルデラ壁と考えられる急崖があり,No.10は急崖の中段に位置する.東側ルートは普通乗用車の通行可能な道路で,No22が崖の下,No.18が崖の上,No.21,19が崖を切り崩してできた道上であるため崖の途中と考えられる.
図-1には観測点と対応させて,常時微動H/Vを併記した.また,No.10の常時微動H/Vを左下に拡大して示した.常時微動H/Vのピーク周波数に着目すると,表層の影響と考えられる3Hzより高周波数帯のピークは観測点によって変化するものの,深い地盤構造の影響と考えられる0.3Hz付近の低周波数のピークはすべての観測点において共通にみられた.0.3Hz付近のピークは急崖の上下でも共通に見られ,港と飛行場の間において振動特性が変化する箇所は見つけることはできなかった.
港と飛行場の間にある急崖がカルデラ壁とされ,港はカルデラ内,飛行場はカルデラ外に位置すると考えられているが,深い地盤構造を反映すると考えられる低周波の振動特性が港から飛行場まで連続しており,従来,カルデラ外と考えられている急崖上もカルデラの影響を大きく受けていることがより明瞭となった.山田ら(2016)でも指摘したように,実際のカルデラ構造は従来の解釈より複雑である可能性がより強く示された.
山田ら(2016):薩摩硫黄島における低周波数のピークを有するサイト増幅特性の要因分析,土木学会論文集A1(構造・地震工学),Vol.72,No.4(地震工学論文集第35巻),pp.Ⅰ_691-Ⅰ_699.