日本地震学会2021年度秋季大会

講演情報

C会場

一般セッション » S17. 津波

AM-2

2021年10月15日(金) 12:00 〜 12:15 C会場 (C会場)

座長:東 龍介(東北大学大学院理学研究科)、馬場 慧(東京大学)

12:00 〜 12:15

[S17-01] 海溝外側で発生する正断層型の大地震とその余震活動との関係について

〇浜田 信生1 (1.なし)

1.はじめに
1933年昭和三陸地震(Mw 8.4)は海溝を挟んだ両側で余震活動が活発化し、海溝外側では本震と同じ正断層型の余震、海溝陸よりではプレート間の逆断層型の余震が発生したと考えられている。一方2006年の千島中部の地震では11月のプレート間地震(Mw 8.3)の直後から海溝を挟んだ海域で昭和三陸地震の場合と似たような余震活動が発生した。この余震分布は二ヶ月後の2007年1月の海溝外側の正断層型の最大地震(Mw8.0)発生前にはすでに形成されていたことから、昭和三陸地震の場合と似たような余震分布が海溝外側の正断層型の地震の発生にかかわらず、プレート間の逆断層地震だけでも形成されることを示している。従って余震分布の類似性を考慮すると1933年昭和三陸地震の震源過程の中にプレート間の逆断層地震の発生が含まれている可能性を、昨年秋の学会で言及した。海溝外側の正断層型地震の発生は希であるが余震分布について他にも似たような事例がないか検討した。
2. 日本海溝外側の場合
日本海溝の外側(outer rise)で発生した正断層型の地震は、大きい方から1933年昭和三陸地震、2011年東北地方太平洋沖地震の直後に宮城県沖で発生した余震(Mw 7.6)、2005年11月に同じく宮城県沖で発生した地震(Mw 7.0)の三つがある。これら三つの地震はいずれも海溝軸から60km前後離れた場所に震央が求められていること、余震が本震の海溝側、西よりの海域に分布するという共通の特徴がある。海溝内側、陸寄りのプレート間逆断層と考えられる余震活動は、2005年11月の地震では発生は認められていない。2011年の地震では本震自体の余震活動との区別は不可能であるためその存在は確認できない。
3.その他の沈み込み帯の場合
2005年の宮城県沖の地震で、海溝内側の余震活動が誘発されなかったことの理由として地震の規模(Mw 7.0))が小さかったことが考えられることから、Mw7.5以上の海溝外側で発生した浅い正断層型の地震の余震活動を調査した。海溝外側のプレート内で発生する地震には浅い正断層型の地震以外に、横ずれ型の地震、プレート下部のプレート内で発生する逆断層型の地震がある。
Outer riseでの横ずれ型の地震は、1988年3月のAlaska湾の地震(Mw 7.8)、1998年5月の台湾東方沖の地震(Mw7.5)、 2012年4月のSumatra島沖の地震(Mw 8.6、Mw8.2)の地震、2018年1月のAlaska Kodiak島沖の地震(Mw 7.9)などがある。これらの地震では2012年4月のSumatra島沖の地震以外には海溝内側の地震活動には何ら影響が認められない。Sumatra島沖の地震でも海溝陸側のプレート間の逆断層地震の活動は、海溝外側の余震活動に比較すれば微々たる数で、海溝外側の横ずれ断層の地震が、プレート間地震の発生に与える影響は小さいと判断される。
正断層地震については事例が少なく、資料が不十分ながら1969年11月のSumatra島沖地震(Ms 7.6)、1995年5月のRoyalty諸島の地震(Mw 7.7)、同じく2018年12月のRoyalty諸島の地震(Mw 7.5)がある。1995年の地震では図に示すように海溝軸内側にも余震が発生していることが分かる。しかし海溝外側で発生した余震に比べその数は少数である。昭和三陸地震や、2006年千島中部の地震のような余震活動にはならなかったことが分かる。地震検知能力が不十分だった1969年のSumatra島沖の地震も、報告されている余震の数は少ないが同様の傾向が伺われる。
2018年12月のRoyalty諸島の地震については約3ヶ月前の8月末に海溝内側でMw 6.9のプレート間逆断層地震が発生しその余震が海溝内側で広がっていたことから、2006年千島中部の地震のようなプレート間地震と海溝外側の正断層地震のdoubletと見ることができる。数少ない事例であるが、海溝外側の正断層地震だけでは、昭和三陸地震に伴って発生したような海溝両側での余震活動を形成することは難しいと考えられる。昭和三陸地震の発生の二ヶ月前に北部で発生した先行地震活動(前震)が海溝内側の領域で発生したことも考え合わせると、昭和三陸地震は、海溝外側の正断層地震に、海溝内側でのプレート間逆断層地震を伴った可能性が高い。