The 2021 SSJ Fall Meeting

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Poster session (Oct. 15th)

Regular session » S17. Tsunami

P

Fri. Oct 15, 2021 3:30 PM - 5:00 PM ROOM P10 (ROOM P)

3:30 PM - 5:00 PM

[S17P-04] A Preliminary Examination on Characteristics of Submarine Landslide Tsunami along the Nankai Trough

〇Kentaro IMAI1, Yasuyuki Nakamura1, Toshiya Fujiwara1, Yuichiro Tanioka2 (1.JAMSTEC, 2.Hokkaido Univ.)

南海トラフでは100-200年間隔で巨大地震が繰り返し発生しており,当該沿岸地域では津波による激甚被害を被ってきた.このような歴史的背景に加えて,2011年東北沖地震津波の発生状況を踏まえ.内閣府は現在考え得る最大規模であるM9クラスの南海トラフ巨大地震の波源断層モデルを公表した.この最大想定モデルでは,断層すべりによる津波励起について検討されているが,巨大地震に伴った海底地すべりによる津波励起の影響については検討されていない.一方で,南海トラフ沖において海底地すべり痕は多く見出されている.森本・他(2017)は,南海トラフ沖を包含する日本周辺における海底地すべりの判読を行い,その分布特性について検討を行っている.Strasser et al. (2011) は熊野灘沖における3次元の地下構造反射断面を活かして詳細な地すべり諸元について詳細に検討を行っている.Baba et al. (2019) や黒住・他(2021)は,四国沖土佐ばえにおいてマルチナロービーム音響測深による海底地すべりの調査を実施し,大規模な海底地すべり痕を見出し,さらに,海底地すべりによる津波の影響評価を検討している.いずれの先行研究でも,海底地すべりの発生年代や励起源については言及されていないものの,南海トラフの沖合における海底地すべりの存在が発生状況の理解が進んでいるといえる.
本研究では,先行研究の成果を踏まえて南海トラフ巨大地震に伴って発生し得る海底地すべり津波の規模について,簡易的な評価手法を用いて予察を行い,巨大地震に伴った海底地すべり津波の影響について検討することを目的とする.  地すべり痕の諸元が明らかにされている熊野灘沖 (Strasser et al., 2011)でのイベントにおける津波励起の規模について検討を行った.Strasser et al. (2011) で評価された地すべり規模について,発生個所の水深は2,200 m,地すべりの推定長さおよび幅は10 kmと3~5 km,構造断面から読み取ることのできる滑落深さは150~2200 mである.この地すべり諸元に基づいてWatts et al. (2005) で地すべりによる最大津波励起振幅を評価するとおおよそ10 cm程度となり,沿岸での津波は最大で40 cm程度となる.この地すべり痕の近傍地域である和歌山県那智勝浦を例としてその影響を検討してみると,当該地域では,1707年宝永地震で6~7 m,安政東海地震で6 m,昭和東南海地震では4 m程度であり,熊野灘沖の地すべり痕による津波の影響は1割程度以下となる.ただし,津波周期に応じた副振動の影響などは考慮していないため,定量的な評価には数値解析を要する.ただし,同規模の海底地すべりがより浅い水深で発生する場合には結果は大きくことなり,Strasser et al. (2011) で評価された地すべり規模が水深200 m程度の海域で発生した場合,最大津波励起振幅は3 mを越えることとなり,無視できなくなる.  
本発表では,森本・他(2017)による地すべり痕の判読成果を活用して,南海トラフ沖の海底地すべり規模の評価を行い,巨大地震に伴う海底地すべり津波の影響について検討する.
謝辞:本研究は 科学研究補助金(研究代表者:谷岡勇市郎,課題番号:19H01977)Rの一環として行われました.