日本地震学会2021年度秋季大会

講演情報

B会場

一般セッション » S18. 地震教育・地震学史

PM-1

2021年10月16日(土) 14:00 〜 15:00 B会場 (B会場)

座長:光井 能麻(名古屋大学)

14:00 〜 14:15

[S18-01] 国立科学博物館で開催した東日本大震災からの10年間についての企画展

〇室谷 智子1 (1.国立科学博物館)

2021年は東日本大震災から10年となる年である.国立科学博物館(以下,科博)では,地震発生日である3月11日を含む約1か月間(3月9日~4月11日)を会期として,企画展「東日本大震災から10年-あの日からの地震研究―」を開催した.災害を風化させないため,当時の被害や復興の様子を振り返るとともに,この10年間の地震調査研究の成果や科博がこの10年間で行ってきた標本レスキュー活動や復興支援事業についても紹介した.科学系博物館での展示であるため,ただ東日本大震災のことを振り返るだけではなく,地震調査研究というサイエンスの部分に重点を置き,私たちは前を見て進んでいるということを示す展示を目指した.コロナ禍の中,入場人数や展示場所の制限を行うなかでの開催ではあったが,約3万人の方に足を留めていただいた.

本展示は第1会場5章+第2会場という構成とした.1章は「東北地方太平洋沖地震と東日本大震災」として,地震の概要や当時の被害状況を岩手県の津波被災資料(東北地方整備局より借用)とともに振り返った.2章は「地震調査研究の貢献」として,この10年間の大きな成果と言える日本海溝海底地震津波観測網(S-net)や緊急地震速報の改良,2020年から導入された津波フラッグ(気象庁より借用)の紹介など,震災以降に巨大地震に対する防災・減災に向けて行われてきている調査研究の一部を紹介した.この企画展の目玉となったのは海底地震津波観測装置(日本電気株式会社・防災科学技術研究所より借用)で,展示ホール中央に展示したが,かなりのインパクトを与えたようである.来場者からは,津波フラッグの取り組みを始めて知ったというコメントが多かった.3章は「くり返し起こる地震・津波」として,東北地方をくり返し襲った地震・津波について紹介した.日本三代実録における869年貞観地震の記述や,明治三陸地震,昭和三陸地震に関する資料,ならびに仙台平野での津波堆積物のはぎ取りとその調査風景(産業技術総合研究所より借用)を展示した.また,今年は1891年濃尾地震から130年という節目の年でもある.4章では「いつでもどこでも地震は起こる」として,海域で発生した観測史上最大の地震である2011年東北地方太平洋沖地震に対して, 陸域で発生した観測史上最大の地震である1891年濃尾地震の写真を展示した.5章は「国立科学博物館の取り組み」として,この10年間に科博として行った被災地の標本レスキュー活動や復興コラボミュージアム活動について紹介した.さらに第二会場では「東日本大震災からの復興と伝承」として,この10年間の三陸地方の復興の様子を辿った映像や写真(NHKテクノロジーズより借用)とともに,東日本大震災に関する伝承施設の紹介パネルを展示した.

展示できたのは震災に関するほんの一部であり,関連する講演会を開催することもできなかったが,会期中は春休みだったということもあり,親子連れや友人同士で観に来られた方が多かった.展示を見ていく中で,改めて思い出したことや自分がするべきことを考えることができた,という感想も見られた.今後も博物館という強みを生かし,展示等を通して,来館者に地震・津波や防災に関する教育や普及に努めていきたい. 最後に,本展示にあたっては多くの方々にお世話になりました.深く感謝申し上げます.