3:30 PM - 5:00 PM
[S21P-03] Stress drops of small earthquakes off the east coast of Ibaraki and Chiba Prefectures: Spatial heterogeneity in frictional properties on the subducting Pacific Plate
1. はじめに
茨城県・千葉県東方沖では、太平洋プレートの沈み込みに伴う地震が定常的に多数発生している。本研究では、2003年1月から2019年12月の期間に茨城県沖・千葉県東方沖で発生した小地震 (4.2 <= Mw <= 5.0) のうち、2. で説明するとおり、太平洋プレートの摩擦特性を反映していると考えられる576地震について、S波を用いて応力降下量を解析した。
2. 解析対象地震と解析手法
2003年1月から2019年12月に茨城県沖・千葉県沖で発生した 4.2 <= Mw <= 5.0 の地震の内、震源が太平洋プレート上面から15 km以内の地震について、Yamada et al. (2021)の手法を用いて応力降下量を解析した。 まず、各解析対象地震に最も震源の近いMw 3.5の地震の観測波形を経験的グリーン関数とした。また、周波数領域にて解析対象地震の観測波形を経験的グリーン関数の波形で除し、観測点ごとにスペクトル比を求めることにより、震源の情報を抽出した。次に、地震の震源スペクトルはオメガ2乗モデル(Boatwright, 1978)に従うと仮定し、スペクトル比から解析対象地震および経験的グリーン関数地震のコーナー周波数を求めた。さらに、Madariaga (1976) の円形断層モデルに従って、コーナー周波数から応力降下量を推定した。この操作を解析対象地震すべてについて実行し、576地震の応力降下量を求めた。
3. 結果および考察
緯度経度0.1度ごとに平滑化した応力降下量の解析結果を図1に示す。茨城県中部沖 (図1. の領域A) で応力降下量の値が大きく、スロースリップの発生が報告されている千葉県沖 (領域B) で小さい特徴が見られる。この領域AとBの応力降下量の差は、t検定より危険率5%で有意な差であることが確認できた。また、2011年東北地方太平洋沖地震の震源域 (図1. の領域C) では、応力降下量の値が大きい。これは、過去の大地震大すべり域で応力降下量が大きいと主張しているYamada et al. (2017) の結果と調和的であり、応力降下量の空間分布から剪断強度の不均質性の推定ができると主張しているYamada et al. (2021) の結果を支持する。今後、P波についても解析を行うとともに、応力降下量の時間変化の有無を確認しながら、摩擦特性の時間変化についても議論したい。
謝辞:本研究では、Hi-net (防災科学技術研究所)、気象庁、国土地理院、国立大学の観測点の地震波形データと、気象庁の一元化震源およびP, S検測値を使用しました。記して感謝いたします。
茨城県・千葉県東方沖では、太平洋プレートの沈み込みに伴う地震が定常的に多数発生している。本研究では、2003年1月から2019年12月の期間に茨城県沖・千葉県東方沖で発生した小地震 (4.2 <= Mw <= 5.0) のうち、2. で説明するとおり、太平洋プレートの摩擦特性を反映していると考えられる576地震について、S波を用いて応力降下量を解析した。
2. 解析対象地震と解析手法
2003年1月から2019年12月に茨城県沖・千葉県沖で発生した 4.2 <= Mw <= 5.0 の地震の内、震源が太平洋プレート上面から15 km以内の地震について、Yamada et al. (2021)の手法を用いて応力降下量を解析した。 まず、各解析対象地震に最も震源の近いMw 3.5の地震の観測波形を経験的グリーン関数とした。また、周波数領域にて解析対象地震の観測波形を経験的グリーン関数の波形で除し、観測点ごとにスペクトル比を求めることにより、震源の情報を抽出した。次に、地震の震源スペクトルはオメガ2乗モデル(Boatwright, 1978)に従うと仮定し、スペクトル比から解析対象地震および経験的グリーン関数地震のコーナー周波数を求めた。さらに、Madariaga (1976) の円形断層モデルに従って、コーナー周波数から応力降下量を推定した。この操作を解析対象地震すべてについて実行し、576地震の応力降下量を求めた。
3. 結果および考察
緯度経度0.1度ごとに平滑化した応力降下量の解析結果を図1に示す。茨城県中部沖 (図1. の領域A) で応力降下量の値が大きく、スロースリップの発生が報告されている千葉県沖 (領域B) で小さい特徴が見られる。この領域AとBの応力降下量の差は、t検定より危険率5%で有意な差であることが確認できた。また、2011年東北地方太平洋沖地震の震源域 (図1. の領域C) では、応力降下量の値が大きい。これは、過去の大地震大すべり域で応力降下量が大きいと主張しているYamada et al. (2017) の結果と調和的であり、応力降下量の空間分布から剪断強度の不均質性の推定ができると主張しているYamada et al. (2021) の結果を支持する。今後、P波についても解析を行うとともに、応力降下量の時間変化の有無を確認しながら、摩擦特性の時間変化についても議論したい。
謝辞:本研究では、Hi-net (防災科学技術研究所)、気象庁、国土地理院、国立大学の観測点の地震波形データと、気象庁の一元化震源およびP, S検測値を使用しました。記して感謝いたします。