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[S22-02] Feature Extraction of Earthquake Time-Series Data by Dynamic Mode Decomposition
計測技術の発展およびコンピュータによる演算能力向上により、高密度な観測や多数回のシミュレーションデータを得ることが可能になった。得られた多次元時系列データは、現象を精密に再現する一方で、データ解析をする際に解釈や現象理解が困難になる可能性がある。高密度な観測や多数回のシミュレーションデータを活かすためには、データの背後に潜むダイナミクスや特徴構造を抽出するアルゴリズムが必要となる。 防災科学技術研究所では全国に約2100ヶ所の地震観測点を設置・運用しており、そのうち陸域の約1700ヶ所において強震計による観測を実施している。これらによる地震動データは,被害の原因の究明や震源過程解析など事後検証的に活用され,耐震工学や地震ハザード評価などを通じて将来の震災軽減に役立てられてきた。この情報より、高密度な観測点ごとのリアルタイムな震度情報を得ることができる。複数の観測点による空間的な特徴と時系列データによる時間的な特徴があり、地震現象を高度に理解するためには両者を適切に取り扱う必要がある。 多次元時系列データを解析する方法として、動的モード分解(Dynamic Mode Decompostion: DMD)が挙げられる。DMDは、流体解析の分野において、実験およびシミュレーションで得られた多次元時系列データの中から時空間的な特徴構造を抽出する方法として提案された。一般的に用いられる主成分分析(Principal Component Analysis: PCA)や固有直交分解(Proper Orthogonal Decomposition: POD)は、静的な情報に対する特徴抽出を対象としており、動的な特徴抽出には適さない。また、高速フーリエ変換(Fast Fourier Transform: FFT)は、個々の観測点において動的な時間スペクトルを得ることができるが、空間全体の時間的な特徴構造を把握することには適用できない。DMDは、静的な空間モードだけではなく時間発展を考慮した動的モードの両方を抽出することができる。地震動データにおいても、時空間的な特徴を考慮した空間および動的モードを抽出することは、多次元時系列データからの現象理解の促進に貢献できる可能性がある。 本研究では、DMDを地震動の時系列データに適用し、地震イベントごとのケーススタディを実施することで、DMDの有用性を評価することを目的とする。