11:20 AM - 11:40 AM
[S23-08] [Invited] Nonlinear inversion of geodetic data based on Bayesian statistics
GNSSやInSAR等の測地データを用いて地震現象に関連した地殻変動の変動源を研究するためには、フォワードモデルのパラメータを推定する逆(インバージョン)解析を行う必要がある。測地データに対する逆解析の方法は、目的関数の最小化により最良のパラメータを推定する最適化と、ベイズ統計学に基づきパラメータの事後確率分布を推定するベイズ推定に大別できる。ベイズ推定の枠組みでは、ベイズの定理に基づき、逆問題の解である事後確率分布を推定する。ベイズ推定の利点として、パラメータの不確実性やトレードオフを事後確率分布に基づき定量化できることや、事前情報を解にどの程度反映させるかを決めるハイパーパラメータを客観的に決定できることが挙げられる。しかし、ベイズ推定は最適化に比べて一般に計算コストが高いことが欠点として挙げられる。
断層すべり分布を推定するインバージョンなどの線形の逆問題では、事後確率分布がガウス分布であれば、最小二乗法を用いて事後確率分布を解析的に得ることができる。このような問題は取り扱いが容易で計算コストも低いため、ベイズ推定は広く使用されてきた。一方、非線形の逆問題に対するベイズ推定では、事後確率分布を得るためにマルコフ連鎖モンテカルロ(MCMC)法などの数値的な手法が必要となる。MCMC法は近年、測地データの逆解析に広く用いられるようになりつつあるが、この手法は多数回のフォワード計算を必要とするため、計算コストの高いフォワードモデルに適用することは困難である。
近年の地殻変動のモデリング研究では、断層面上の応力・摩擦やマントルの粘弾性応力緩和などを考慮した物理モデルを導入する動きが加速している。このようなモデルのパラメータを観測データから推定する問題は非線形の逆問題となり、フォワードモデルの計算コストが高いため、一般にMCMC法によるベイズ推定は困難である。このような例として、本講演では余効すべりと粘弾性緩和を組み合わせた余効変動の物理モデルのパラメータを測地データ基づきベイズ推定した結果(Fukuda and Johnson, 2021)を示す。フォワードモデルでは、地震時の応力変化により余効すべりと粘弾性緩和が駆動され、余効すべりは速度依存の摩擦則、粘弾性緩和はBurgersレオロジーに従うと仮定した。また、余効すべりと粘弾性緩和の相互作用を考慮した。地震時のすべり分布、これに対する平滑化パラメータ、断層の摩擦パラメータ、海洋マントルとマントルウェッジのMaxwell及びKelvin粘性率を未知パラメータとし、これらをベイズ推定した。計算コストの高いモデルに対してベイズ推定を行うために、(1) 既存のフォワード計算の結果からVoronoi cellを用いて近似的な事後確率分布を構築し、(2) これをGibbs samplerでサンプリングし、(3) (2)で生成されたサンプルに対してフォワード計算を実施するというプロセスを反復して事後確率分布の推定を逐次的に改良するアルゴリズムを構築した。この手法を2011年東北沖地震の地震時及び地震後7年間の測地データに適用しパラメータのベイズ推定を行った。この結果から、比較的単純な物理モデルに対して測地データに基づくベイズ推定が可能であることが示された。今後、より現実的なモデルに対するベイズ推定を行うためには、できる限り少ない回数のフォワード計算で高次元の事後確率分布を推定できる手法の開発が重要となる。
断層すべり分布を推定するインバージョンなどの線形の逆問題では、事後確率分布がガウス分布であれば、最小二乗法を用いて事後確率分布を解析的に得ることができる。このような問題は取り扱いが容易で計算コストも低いため、ベイズ推定は広く使用されてきた。一方、非線形の逆問題に対するベイズ推定では、事後確率分布を得るためにマルコフ連鎖モンテカルロ(MCMC)法などの数値的な手法が必要となる。MCMC法は近年、測地データの逆解析に広く用いられるようになりつつあるが、この手法は多数回のフォワード計算を必要とするため、計算コストの高いフォワードモデルに適用することは困難である。
近年の地殻変動のモデリング研究では、断層面上の応力・摩擦やマントルの粘弾性応力緩和などを考慮した物理モデルを導入する動きが加速している。このようなモデルのパラメータを観測データから推定する問題は非線形の逆問題となり、フォワードモデルの計算コストが高いため、一般にMCMC法によるベイズ推定は困難である。このような例として、本講演では余効すべりと粘弾性緩和を組み合わせた余効変動の物理モデルのパラメータを測地データ基づきベイズ推定した結果(Fukuda and Johnson, 2021)を示す。フォワードモデルでは、地震時の応力変化により余効すべりと粘弾性緩和が駆動され、余効すべりは速度依存の摩擦則、粘弾性緩和はBurgersレオロジーに従うと仮定した。また、余効すべりと粘弾性緩和の相互作用を考慮した。地震時のすべり分布、これに対する平滑化パラメータ、断層の摩擦パラメータ、海洋マントルとマントルウェッジのMaxwell及びKelvin粘性率を未知パラメータとし、これらをベイズ推定した。計算コストの高いモデルに対してベイズ推定を行うために、(1) 既存のフォワード計算の結果からVoronoi cellを用いて近似的な事後確率分布を構築し、(2) これをGibbs samplerでサンプリングし、(3) (2)で生成されたサンプルに対してフォワード計算を実施するというプロセスを反復して事後確率分布の推定を逐次的に改良するアルゴリズムを構築した。この手法を2011年東北沖地震の地震時及び地震後7年間の測地データに適用しパラメータのベイズ推定を行った。この結果から、比較的単純な物理モデルに対して測地データに基づくベイズ推定が可能であることが示された。今後、より現実的なモデルに対するベイズ推定を行うためには、できる限り少ない回数のフォワード計算で高次元の事後確率分布を推定できる手法の開発が重要となる。