10:30 〜 10:45
[S21-03] Physics-Informed Neural Networksのばねブロックモデルへの適用
微分方程式を解く方法として、近年新たにPhysics-Informed Neural Networks (PINNs)が提唱された(Raissi et al., 2019)。これは物理法則に従う微分方程式と初期条件や境界条件を損失関数に取り込むことにより、その両方を満たすようなニューラルネットワーク(NN)を構成し、対象とする方程式の解を求める方法である。従って、PINNsにより得られた解は物理法則を満たすものであり、物理的に解釈が可能という点で従来のNNとは大きく異なっている。このように、PINNsによる微分方程式の解法は従来の求解法と大きく異なっているが、従来に比べて少ない計算量で大規模計算が可能、経験則を含む物理的に不完全なモデルにも対応でき柔軟なモデリングが可能、逆問題の解法が容易などの利点がある。地震学の分野においても、波動方程式を用いた地震波伝播の計算(Karimpouli et al., 2020)やdislocationモデルを用いた静的変位の計算(Okazaki et al., 2022)など、PINNsを用いた研究が行われ始めている。
本研究では、断層すべりの時空間発展の数値計算にPINNsを用いることを念頭に、PINNsをばねブロックモデルに適用しスロースリップ(SSE)の再現を試みた。初めに、時間ステップ可変のRunge-Kutta法を用いて準動的運動方程式と摩擦構成則を解き、SSEが再現可能な摩擦パラメータを試行錯誤的に探索した。その結果、再来間隔が2.5年程度、最大すべり速度がプレート速度の10倍程度、継続時間が150日程度のSSEの繰り返しが再現可能な摩擦パラメータを求めた。以下で行うPINNsを用いた計算ではこの摩擦パラメータは固定する。また、再現されたSSEのうち1回のSSEのサイクルに注目し、すべり速度が最小になった時刻を初期時刻、その時のすべり速度と状態変数を真の初期値として定義し、その際計算される1回のSSEの時間発展をPINNsで再現することを目的とする。
このような設定の下、損失関数を真の初期値からのずれを表す初期条件の二乗平均誤差と、微分方程式に従った挙動からのずれの二乗平均誤差の重み付き和で定義し、損失関数が最小になるようにNNの学習を行う。初期条件の誤差と微分方程式の誤差の重みは試行錯誤的に決定した。この際、NNの入力はある1つの時刻であり、出力としてその時刻に対応したすべり速度、状態変数の2変数が返される。PINNsでは任意に選んだ多数の評価時刻を順に用いてNNの学習を行い微分方程式の解を求める。この学習に用いる評価時刻の選択には任意性があるため、ここでは、1)事前の時間ステップ可変のRunge-Kutta法による計算から求まる不等間隔(Δt = 10~867 hour)の評価時刻と、2)時間間隔が一定(Δt = 50 hour)の評価時刻、の2種類を用いて学習を行い、計算結果を比較した。なお時間をNNに入力する際は規格化を行っている。また本研究では9層の全結合NNを採用し、活性関数としてtanh関数を用いた。各層のノード数は入力層が1、中間層がすべて20、出力層が2である。
その結果、等間隔・不等間隔の両方の評価時刻において、それぞれ適切な重みパラメータ下では安定して学習が行われ、正確にSSEの時間発展を再現することができた。また、等間隔においては用いる間隔の大きさをΔt = 50 hourから長めに変化させてそれぞれ計算を行ったが、最初に仮定した時間間隔の8倍(Δt = 400 hour)を用いても正しい解が求められた。加えて、評価時刻以外の時刻、すなわちNNの学習に用いていない時刻を入力にした場合においても、正しくSSEのすべり速度を再現することに成功した。
本研究では、断層すべりの時空間発展の数値計算にPINNsを用いることを念頭に、PINNsをばねブロックモデルに適用しスロースリップ(SSE)の再現を試みた。初めに、時間ステップ可変のRunge-Kutta法を用いて準動的運動方程式と摩擦構成則を解き、SSEが再現可能な摩擦パラメータを試行錯誤的に探索した。その結果、再来間隔が2.5年程度、最大すべり速度がプレート速度の10倍程度、継続時間が150日程度のSSEの繰り返しが再現可能な摩擦パラメータを求めた。以下で行うPINNsを用いた計算ではこの摩擦パラメータは固定する。また、再現されたSSEのうち1回のSSEのサイクルに注目し、すべり速度が最小になった時刻を初期時刻、その時のすべり速度と状態変数を真の初期値として定義し、その際計算される1回のSSEの時間発展をPINNsで再現することを目的とする。
このような設定の下、損失関数を真の初期値からのずれを表す初期条件の二乗平均誤差と、微分方程式に従った挙動からのずれの二乗平均誤差の重み付き和で定義し、損失関数が最小になるようにNNの学習を行う。初期条件の誤差と微分方程式の誤差の重みは試行錯誤的に決定した。この際、NNの入力はある1つの時刻であり、出力としてその時刻に対応したすべり速度、状態変数の2変数が返される。PINNsでは任意に選んだ多数の評価時刻を順に用いてNNの学習を行い微分方程式の解を求める。この学習に用いる評価時刻の選択には任意性があるため、ここでは、1)事前の時間ステップ可変のRunge-Kutta法による計算から求まる不等間隔(Δt = 10~867 hour)の評価時刻と、2)時間間隔が一定(Δt = 50 hour)の評価時刻、の2種類を用いて学習を行い、計算結果を比較した。なお時間をNNに入力する際は規格化を行っている。また本研究では9層の全結合NNを採用し、活性関数としてtanh関数を用いた。各層のノード数は入力層が1、中間層がすべて20、出力層が2である。
その結果、等間隔・不等間隔の両方の評価時刻において、それぞれ適切な重みパラメータ下では安定して学習が行われ、正確にSSEの時間発展を再現することができた。また、等間隔においては用いる間隔の大きさをΔt = 50 hourから長めに変化させてそれぞれ計算を行ったが、最初に仮定した時間間隔の8倍(Δt = 400 hour)を用いても正しい解が求められた。加えて、評価時刻以外の時刻、すなわちNNの学習に用いていない時刻を入力にした場合においても、正しくSSEのすべり速度を再現することに成功した。