公益社団法人日本生化学会

[1BS1-1] 新規細胞内デリバリ―技術SU10を用いたCRISPR/Cas9のヒト細胞核への直接導入による高効率ゲノム編集

國場 遼 (東京理科大学 理工学部 応用生物科学科 鎌倉研究室)

ゲノム編集、細胞内デリバリー、細胞内導入法、シングルセル、1細胞操作

CRISPR/Cas9を用いゲノム編集を実施する場合、Cas9タンパク質とsgRNAの複合体 (Ribonucleoprotein: RNP) を細胞内に直接導入することで、オフターゲット効果や免疫応答の低減が期待できる。一方、Cas9 RNPの細胞内導入効率の向上が現在の課題であり、細胞種に依存しない高効率なデリバリー手法の開発が求められている。本硏究では新規細胞内デリバリー技術であるSingle CellomeTM Unit SU10 (横河電機社製) を用いた、細胞核内への選択的なCas9 RNPデリバリーによるゲノム編集効率を検証した。SU10は、1細胞レベルで細胞質や核へ直接、目的物質を導入することが可能な技術である。顕微鏡観察下で細胞を選択し、ナノピペット(先端外径が最小数十nmのガラスキャピラリー)に充填した溶液を、電気化学的機構を利用した自動操作により細胞内にデリバリーを行う。今回、GFP安定発現細胞株のGFP遺伝子を標的としたところ、70%以上のゲノム編集ノックアウト効率が認められた。また、相同配列依存的修復(HDR)によるGFP遺伝子からBFP遺伝子への改変にも成功した。今後、適応細胞種の拡大や他の標的遺伝子の編集効率の評価も必要ではあるが、SU10自動ナノデリバリーは、Cas9 RNPの効率的な細胞内導入技術であると考えられる。