Japan Association for Medical Informatics

[PL] ビッグデータ再考 -今、我々がするべきこと-

*横井 英人1 (1.香川大学医学部附属病院 医療情報部)

 今大会では当初、テーマを「ビッグデータ再考 現在・過去・未来」として、過去を顧み、現在の状況を考慮し、未来を見据えた議論を行おうと考えていた。特に「いつかはこうなるであろう」といった希望的観測のみで未来を語るのではなく、そのような未来を迎えるために、現状のどこに問題があるのか、どのように解決していくべきか、各施設の医療従事者・医療情報担当者が自分らの課題として捉え、解決方法を議論する場としようと考えた。
 しかし、直近で頻発したセキュリティ問題により、医療の存続が危ぶまれる深刻な事態が起き、この大会では、学術的な観点からビッグデータを考えるのみではなく、現実的な観点も盛り込んだ情報発信をする必要が生じた。
 その結果、過去について議論する余裕がなくなり、現状と解決策の模索を行うセッションを作ることに腐心することとなった。
 セキュリティの問題は、個人情報保護法、医師法などの観点から我々に重い責任を思い起こさせ、ビッグデータを扱う上で、それを悪意のある者から守るという課題が現実化した。
 近年Real World Data(RWD),Real World Evidence(RWE)というキーワードが臨床研究・薬事分野で聞かれる。これもビッグデータの延長線上の内容であるが、10年以上にわたり、臨床研究支援と医療情報の両分野に携わってきた中で課題と感じている点について考えたい。それは電子カルテが臨床研究の元データにふさわしい質を備えているか、という点である。この「質」には二つの意味があり、一つは臨床的に高い質のデータであるか、もう一つはデータ保存に於いて質の高い運用がなされているか、ということである。この二つの質確保、信頼性確保を如何に行うべきか議論したい。