Japan Association for Medical Informatics

[CS2] 電子カルテ・医療情報システムの価値と課題(20年を経た統括)

*渡邊 直1、*松村 由美2、*白鳥 義宗3、*坂本 知浩4 (1. 医療情報システム開発センター、2. 京都大学医学部附属病院、3. 名古屋大学附属病院、4. 済生会熊本病院)

 電子カルテが正式な診療録として、運用が始まり、今年で23年目となります。一方、2020年にわが国にも波及したCOVID-19パンデミックは猛威を振るい、後手に回った対策の中でも、我が国の医療ICT活用が欧米に比し遅れている点が指摘されました。特にEHR、Telemedicine、EHRデータの利活用の差は歴然であったことから、急遽政府は、オンライン資格確認の義務化や全国医療情報プラットフォーム構築などここ1年で、急速に医療DXに向けた政策を強力に推し進めています。このため、今ではその声はやや薄くなりつつありますが、それまでは、病院コストの中で、最大である電子カルテあるいは病院情報システムの費用が、全国各地の病院で非難されました。この事態には、医療情報システムの導入・運用に日々真摯に取り組む本学会員の皆さまの多くが、忸怩たる思いをされたものと思います。
 今や、全国立大学病院はもちろん、地域の主たる拠点病院あるいは医学教育を担う病院がすべからく電子カルテを導入し、これを契機にあらゆる業務が病院情報システムを活用する統合型総合病院情報システムに発展しました。したがってもはや、あらゆる業務はシステム端末無しには不可能です。にもかかわらずこのような事態に至ったのは、システムベンダーによる合理的なコストダウンが進んでいない点もありますが、医療情報に関わる我々が、病院幹部職員あるいは利用者である全職員に、真の価値をうまく伝えきれてない点もあるかと思います。このような現状を鑑み、本セッションでは、電子カルテあるいは病院情報システムを、1)医療の質の視点、2)医療安全の視点、3)病院マネジメントの視点、4)病院経営の視点から、それぞれの分野でご活躍の4名の皆さまに、各分野における価値と課題をご講演いただきます。これに会場の皆さまからのご意見も交え、23年目を迎えた電子カルテシステム& 病院情報システムの真の価値を正しく理解し、各病院でそのエッセンスをご活用していただきたいと考えております。
 多くの皆さまのご参加を祈念いたします。