Japan Association for Medical Informatics

[2-A-2-PL] 「医療情報学が紡ぐいのち・ヒト・夢」

武田 裕 (滋慶医療科学大学院大学)

今大会テーマ「医療情報学が紡ぐ『いのち・ヒト・夢』」です。知識・技術の高度化とともに生物学、医学、工学、経済学など関連諸科学の進歩は著しいものがあります。これらを縦糸として、医療情報学は横糸の役割を担って、生命現象や疾病本態の解明など「いのち」を、健康寿命の延伸、効率化と質を担保したヘルスケアシステムの構築など「ヒト」を、さらに究極的には個体の遺伝情報と生活環境情報を統合したプレシジョン医療など「夢」を実現するために、医療情報学の発展が期待されています。
今年は、世界的にはグローバル化の後退、国内的には少子高齢化の加速など大きな転換の時とも言われています。ヒトは、その誕生以来、もっと過酷な環境に適応して生存し、寿命を延ばしてきました。そのメカニズムは、状況を把握するセンサー、その情報を統合して意思決定するプロセッサー、そして指示された行動を行うエフェクターから成る最適制御プロセスです。個体は一連のプロセスを脳に記憶し成長する情報システムです。さらに個体は集団の中においても互いに情報を共有し、集団としての行動最適化を行ってきました。この概念は、世界・国・地域・施設・家庭・個人レベルでの最適なコントロールに適応されるべきで、医療情報学の根幹をなす論理です。
IoTやAIに代表される情報通信技術の進歩は、第4次産業革命とも称される状況です。しかし、技術・データは統合、分析、共有、活用されねば価値を生じません。すなわち「Be(である)」ではなく「Do(実行する)」を図る科学領域が医療情報学であることを、この不確実な時代においてこそ再確認すべきではないかと思います。その意味で、clinical cyberneticsをキーワードの一つとして講演を行います。