[2-A-4-CS1-1] クリニカルバイオバンクとがんゲノム医療の目指す未来
バイオバンクは、医学および医療の発展に欠かせないインフラであるが、収集するだけではなく利活用を見据えた整備が必要である。バイオバンクにおける最も重要な課題として、収集される生体試料の品質とそれにひもづく臨床情報の質と量が挙げられる。京大病院では、がん治療を受ける患者さんの様々な臨床情報と生体試料を治療前後の時系列で蓄積し解析するBiobank & Informatics for Cancer (BIC) project を平成25年9月より開始し、これまでに2100人以上、6万検体以上の生体試料を収集してきた。また、さまざまな医薬品や診断薬開発に繋げるため、on demand型の要望に対応する病院併設型バイオバンク(クリニカルバイオバンク)の機能も有する。臨床情報は、京都大学とサイバーラボ社が開発した電子カルテの情報を構造化データベースにできるアプリケーション(CyberOncology Sytem)を用いて収集している。一方、ゲノム解析技術の進歩により、網羅的遺伝子解析は基礎研究から臨床応用に大きく展開され、クリニカルシーケンスに基づくいわゆる精密がん医療(Precision Cancer Medicine)の時代が訪れようとしている。われわれは、わが国ではじめて精度管理されたクリニカルシーケンス(OncoPrime™)を三井情報株式会社と構築し、平成27年4月より臨床導入した。OncoPrime™は、がん関連223遺伝子中に含まれる21000以上のCOSMICに登録された遺伝子変異を網羅し、標準治療がない原発不明癌や希少癌、標準治療不応の進行癌症例を対象としている。これまで180例以上の症例を経験し、actionable mutationは約90%以上に見つかっている。現在、AMEDの臨床ゲノム情報統合データベース事業の中で、これらのゲノム情報と治療内容を含む臨床情報を統合するデータベースを構築し、Precision Cancer Medicineの社会実装を目指している。本シンポジウムでは、われわれの取組について紹介したい。