Japan Association for Medical Informatics

[2-A-4-CS1-4] ビッグデータと個人を繋ぐ基盤整備

末岡 榮三朗, 佐藤 明美, 中村 秀明, 藤井 進 (佐賀大学医学部)

プレシジョン・メディシンを実践するうえで欠かせないのが、個のデータをいかにビッグデータの一部として登録するかとともに、蓄積したビッグデータをいかにして個に利活用するかといった、両方向の基盤整備である。

現在、佐賀大学病院ではビッグデータの構築の取り組みとして、PMDAが構築しているMID-NET事業に参加し、電子カルテ情報に基づく臨床データの統合のための基盤整備に取り組んでいる。具体的には、佐賀県内の複数医療機関における検査データの共有化作業を進めており、統合された検査データを個人ごとに抽出するためのプログラム(Clinilan PV)を構築し、利活用の検証を開始している。一方で患者個人の医療情報を活用する取り組みとして、プロジェクト指向性(オンデマンド型)バイオバンクを運用している。当院バイオバンクの特徴としては、臨床情報表示プログラムとロボット倉庫を直接連動させ、医療情報の収集管理による疾患データベースの構築と臨床検体の利活用が行える多施設連携対応型であることがあげられる。

本発表では当院における上記の仕組みを紹介するとともに、具体的運用から見えてきた医療ビッグデータの構築と利活用における以下の問題点についても考察する。すなわち(1)いかに個人の医療情報を標準化された形式で網羅的に集積するか、(2)医療機関ごとに集積された医療情報をどのような統一規格で統合するか、(3)個人ごとの連続性が担保されているか、(4)集積されたデータを利活用できるためのツールの整備、(5)統合された医療情報の精度と統合方法、などである。医療分野でのICTの活用や医療連携、ビッグデータの利活用は国家戦略として最重要課題であるがゆえに、データの信頼性やビッグデータと個人を繋ぐ具体的方法論も大切な検討課題であると考えている。