一般社団法人 日本医療情報学会

[2-B-3-OP12-4] Hyper-Converged Infrastructure(HCI)による仮想化環境全体の高速化と長寿命化

野口 忠祥1, 甲斐 聖人1, 中熊 英貴1, 東 賢剛1, 松尾 健司1,2, 佐方 友和2 (1.社会福祉法人恩賜財団済生会熊本病院 医療情報システム室, 2.株式会社ブレス)

【背景】

当院は2010年に複数台の物理サーバをスイッチ経由で1台のストレージに接続する3階層構成の仮想化基盤を構築し、サーバ仮想化を推進してきた。2011年の電子カルテ導入を機に部門システムサーバ、VDI(Virtual Desktop Infrastructure)など約200台を仮想化、その後もハード追加をしつつ拡大し、2014年には約300台の仮想マシンを稼働させた。3階層の仮想化基盤はストレージにDisk負荷が集中し、拡大に伴いレスポンスが低下する。また、高速化と安定稼働のために高価なストレージ製品を採用するため、大容量サーバの仮想化は費用対効果が得られにくい。さらに仮想化基盤のハード更新時は、大量の仮想マシンを受け入れ可能な大規模な新環境が必要となり、高額な投資と膨大な移行作業が生じる。途中で増設した機器は使用期間が5年未満となり、活用不十分で役目を終える。更なる仮想化拡大のためには仮想化基盤の刷新が必要であった。

【目的】

仮想マシン増加によりレスポンスが低下することなく、ハード寿命に左右されない仮想環境を構築し、仮想化全体の高速化と長寿命化を実現する。大規模な環境更新を減らし、作業負荷と投資の集中を防止する。大容量サーバを仮想化し、更なる仮想化拡大を図る。

【方法】

Hyper-Converged Infrastructure (HCI)の仮想環境を構築し、各ノード(物理サーバ)に負荷分散し、数台のノード追加で仮想化全体の性能をコントロール可能とする。別途、スケールアウト型NASを構築し、容量単価の低い筐体選択を可能とする。

【結果】

9ノード構成のHCIで150台の仮想マシンを稼働し、レスポンス低下は発生していない。新たに70台の仮想マシンを稼働予定であり、6ノード追加し、対応する。HCI、スケールアウト型NASにより、5年が経過したノードを順次入れ替えながら、長期間使用できる環境となり、投資分散と無駄のない機器利用が可能となった。画像サーバ仮想化において、システム領域をHCI、画像領域をNAS(Network Attached Storage)に割り当て、大容量サーバの仮想化コストを抑えることができた。