Japan Association for Medical Informatics

[2-C-1-OP2-1] 北海道における救急車の現場到達時間から見た到達圏人口の推計

小林 永一, 藤原 健祐, 石川 智基, 小笠原 克彦 (北海道大学大学院保健科学院)

【背景・目的】北海道における救急出動件数は、平成20年度から現在まで概ね増加傾向にあり、それに伴って救急車が現場到達までに要する時間も延長することが予測される。救急医療は発症から治療開始までの時間により治療効果が大きく異なるため、到達時間を考慮した現状分析に基づく救急車の配置計画が必要である。救急車の配置を評価する指標に、到達圏域内の人口カバー率が挙げられるが、北海道において、到達時間から見た人口カバー率についての地域的な分析は行われていない。そこで本研究では、北海道の救急車の配置について到達時間の観点から評価することを目的とし、地理情報システムを用いて到達可能圏域およびその人口カバー率を算出した。
【方法】対象は北海道における消防署等に配置された救急車とし、各地域の最新の消防年報から所在地を調査した。北海道全域において救急車の配置された場所からの3分・5分・10分・15分で到達できる圏域を表示し、その範囲内の人口カバー率を計算した。また、2次医療圏毎に到達可能圏域の表示と人口カバー率を算出した。分析ソフトには、ESRI社 ArcMap10.2を使用した。
【結果】救急車の出動から5分以内で到達可能な範囲の人口カバー率は北海道全域で70.2%であり、10分では93.3%、15分では97.7%であった。また、2次医療圏ごとに分析を行った場合において5分以内に到達できる人口が最も多かったのは札幌医療圏で77.3%であり、一方で最も低かったのは十勝医療圏で51.3%であった。15分の場合では札幌医療圏が99.7%と最も高く、根室医療圏が83.2%と低い値となった。これらの結果から、各二次医療圏の人口カバー率の可視化が可能であり、救急医療の提供体制に地域間格差があることが示唆された。今後、救急車の搬送可能圏域にある医療機関の配置についての検討や、季節による到達圏域の変動などを研究に反映させていく必要があると考える。