一般社団法人 日本医療情報学会

[2-C-1-OP2-4] 離島・へき地の妊婦をサポートする遠隔診療技術

新見 隆彦, 辰巳 治之 (札幌医科大学大学院医学研究科生体情報形態学)

【はじめに】北海道南西域における周産期医療環境の特徴は、「二次医療圏を越え」て中核都市(函館市・小樽市等)が、周辺地域(離島、山間部等、通院至難地域)在住妊婦の受診(健康診査、分娩等)を受け入れている点にある。医療機関の立地、気象条件、交通手段等、地域特性とともに当該地域の医療環境を俯瞰する時、『医療サービスレベル格差』の補正・均衡が喫緊の課題である。
【方法】平成20年度より臨床現場への情報通信技術(ICT)の効果的適用を企図し各種地域医療支援プロジェクトを実施した。その中で、周産期医療支援システムは離島・奥尻島に焦点を当て、地域住民=妊婦視点に立脚した共通基盤技術により構成される。
1) Cloud型周産期電子カルテによる診療情報共有・連携、
2) Vital Data Monitoring(血圧、心拍、体重、活動量、胎児心拍[CTG]・胎動、陣痛図等)、
3) TV Conference System、
4) 超音波診断画像のリアルタイム伝送適用等、を用い、『遠隔妊婦健康診査』を施行した。
【結果】2008年より15年に至る8箇年間の奥尻島在住妊婦[n=151]中、遠隔妊婦健診適応数は11名であり、平均妊婦健診回数は11.2回、妊婦健診施行総数[123回/11名]中、遠隔健診施行総数は55回であった。妊婦1名当り平均適用数は5回・遠隔適用率は44.7%に達し、妊娠中期以降(24週~分娩)の健診施行回数のほぼ50%に相当した。
【考察】遠隔健診施行結果より、本システム環境が当該地域における周産期医療を支援し補完し得る可能性が明白となり、かつ妊婦の各種受診負荷の縮減が可能であることが明示された。この健診環境は電子カルテ(pEMR)による情報連携を中心に各種システム等を統合し形成されるが、設計及び構築・運用に際しては地域特性を充分に踏まえ、かつ具体的な要員体制とシステム・機器・通信設備等を包含した医療関連資源(=医療サービス機能)の面的「資源計画」が重要であろう。更に、本研究の基盤的技術プロトタイプは他科・在宅医療等への適用が可能であることも併せ示唆された。