Japan Association for Medical Informatics

[2-C-2-JS3-4] 「内服薬処方せんの記載方法の在り方に関する検討報告書」に対する対応状況と今後のあり方

橋本 陽子 (株式会社タカゾノ)

平成22年に「内服薬処方せんの記載方法の在り方に関する検討報告書」が発出され、電子カルテの対応など導入の枠組みは現在整いつつあるが、平成29年5月に報告された「内服薬処方箋の記載方法標準化の普及状況に関する研究」の結果では、いまだ多くの医療機関で一回量処方に未対応であることが明らかとなった。
弊社は部門ベンダーとして、医療機関の運用に沿ったシステム・機器の導入を行っている。弊社現場スタッフに対し医療機関での対応状況についてヒアリングを行った結果、報告書は医療機関側に周知されており、導入に関する相談をしばしば受けるが、新規システム導入時に上がる仕様の中での優先順位は高くなく、電子カルテから送信された一回量データを部門で処理した事例はないという現状であった。しかしながら、調剤プロセスでは一包化分包など1回服用量のデータを扱うことは一般的であり、ある程度のシステム対応は可能であると考えていることがわかった。
医療教育の場においては、現在1回量処方が基本であると教育されており、医療全体のリスクマネジメント(マクロのリスクマネジメント)から見ると1日量処方をベースとした文化を改める必要性は高いと考えられるが、一方で一医療機関におけるリスクマネジメント(ミクロのリスクマネジメント)の面からは、運用変更によって他部門に渡って広くミスを誘発するリスクが一時的に高まることが懸念される。このアンビバレンツから積極的に報告書に対応するまでに至っていないというのが医療機関における本音であると感じている。
部門ベンダーとしては、調剤・与薬のトラッキングなどに代表される「ミクロのマネジメント」に対応しつつ、データ交換仕様の標準化などに代表される「マクロのマネジメント」の段階的な環境変化に対応するなど、マクロとミクロ2方向からバランスよく対応することによって、全体最適に貢献できるのではないかと考えている。