一般社団法人 日本医療情報学会

[2-D-1-OP3-3] 病院情報システムのデータ品質阻害要因の利用者行動指向での整理と改善のためのマネジメントモデルの試作

津久間 秀彦, 田中 武志, 池内 実 (広島大学病院医療情報部)

【背景】病院情報システム(以下HIS)のデータ品質では「現場の事実と記録が異なる/記録の不備が医療安全に悪影響を及ぼす」等、一次/二次利用とも様々な問題が指摘されてきた。診療看護現場は統制が効きにくいため、運用も含めて利用者が正しく行動しやすいシステム系を構築しないとデータ品質の向上は難しい。そのために、システム基盤や入力機能を利用者行動指向で捉えて、広報・教育や運用との相互関係の中で適正化することが重要である。
【目的】利用者動指向でHIS利用の問題を議論した事例報告はいくつかあるが、課題と改善策が全国規模で系統的に共有されていない。そこで利用者行動関連の問題事象の先行事例を元にHISデータの品質阻害要因を統合的に整理し、システム構築や運用時の注意点を、施設を越えて共有するための概念モデルを試作する。
【方法】医療情報学連合大会論文集等から、利用者行動指向での問題点を抽出して発生パターンを分類した。更にそれを基にデータ品質の阻害要因の管理・改善のためのマネジメントモデルを検討した。
【結果】データ品質の阻害要因は大きく3つに分類された。①利用者は正しくシステム系(機能と運用)を利用して正しい記録が蓄積されたように見えるが、システムの構造的な問題等によりデータ利用時に問題が生ずる/②利用者がシステム系を正しく利用しないため正しい記録が蓄積されない/③利用者はシステム系を正しく利用しても正しい記録が蓄積されない(障害)。マネジメントモデルでは、①と③について仕様策定や実装時に予め注意すべき要素とその対処方法を記述すると共に、②について、利用者の正しくない入力行動の原因を「関連情報不足/機能・運用乖離/多忙・忘却/利便重視/無価値」型などに分類する考えを盛り込んだ。
【考察】今回のモデルは文献情報を基に構築したため、今後、病院の現状を照会して、枠組みの妥当性や項目の過不足の検討を行う必要がある。