一般社団法人 日本医療情報学会

[2-E-2-AS1-2] AI等の利活用を見据えた病理組織デジタル画像(WSI)の収集基盤整備と病理支援システム開発-Japan Pathology AI Diagnostics Project (JP-AID)-

佐々木 毅1, 宇於崎 宏2, 吉澤 明彦3, 坂元 宇亨4, 深山 正久5 (1.東京大学医学部附属病院 地域連携推進・遠隔病理診断センター, 2.帝京大学医学部 病理学講座, 3.京都大学医学部附属病院 病理診断科, 4.慶應義塾大学 病理学分野, 5.東京大学大学院医学系研究科 人体病理学・病理診断学分野)

日本病理学会では,日本医療研究開発機構(AMED)の支援により「病理組織デジタル画像(Pathology-Whole Slide Imaging: P-WSI;バーチャルスキャナーで作製した病理デジタル画像)」を,オールジャパン体制でクラウドデータサーバに収集・集約化し,病理診断生涯教育用コンテンツおよび人工知能(Artificial Intelligence:AI)を活用した病理診断支援ツールの開発研究を行う.
現在,病理学会認定医療機関には約100万症例のP-WSIが保存されている.このうち,今年度は大学病院など23医療機関,病理学会7支部等から11万症例のP-WSIおよびそれに紐づいた患者情報等を,病理学会・National Clinical Database(NCD) 共用のクラウドデータサーバに収集する.1枚のP-WSIは大容量(9億から36億画素)であるため,収集基盤には学術情報ネットワークSINET5を使用する.ビッグデータを活用して,病理診断生涯教育用コンテンツ等をNCD,東京大学の支援により共同開発すると同時に,病理学研究支援等を目的にデータ整備,アーカイブ化事業を行う.またAI開発研究用「アノテーション付き正解教師データ」を作製し,国立情報学研究所(National institute of Informatics: NII)との共同により「AI病理診断支援ツール」の開発およびAI研究者へのデータ提供を目的としたアーカイブ化事業も行う.さらに自律性・持続性・悉皆性を備えた収集システムの開発を目指し,「地域基盤・循環型病理診断相互支援モデル」を,滋賀県と長野県の2拠点で実証実験し,P-WSIと患者情報を前向きに収集するためのシステム開発研究も行う.
なお今秋からは,日本消化器内視鏡学会および日本医学放射線学会との画像連携に関しての模索研究も計画している.