一般社団法人 日本医療情報学会

[2-F-1-OP4-4] 退院時サマリーの質的監査(評価法ならびに多職種による評価についての検討)

渡邉 直1,2, 岡田 定2, 嶋田 元2,3, 押見 香代子2,3 (1.聖路加国際大学・教育センター, 2.聖路加国際病院・医療記録オーディット委員会, 3.聖路加国際大学・情報システムセンター)

【目的】慢性疾患を複数持った患者を多科多施設多職種で管理継続するに当たり,重要な情報伝達のツールとして退院時サマリーを位置づける.その上で記載すべき項目と内容を定め,それが十分に満たされているかどうかを適宜監査することで,サマリーの質を担保,さらに向上させる.
【方法】2012年来,退院時サマリー監査において20項目の具体的な評価ポイントを設定し,これが満たされていれば2点,記載不十分であれば1点,記載がない,あるいは不適切であれば0点という,比較的単純な評点法を作成した.これに基づき,適宜の抽出で研修医のサマリーを評点し,2点満点(合計点/(20-該当なしの項目数))で可視化した.
【結果】2012年時点で20項目の要記載項目についての教育を徹底した結果2013年時点で研修医のサマリー評点(n=111)は1.21±0.23点から1.63±0.19点に有意(t-検定でp<0.00001)に向上した.以後,教育を繰返し2014~2017年度の研修医サマリーでは1.6点を維持,2017年5月の調査(n=40)では1.68±0.18点と前年度までと比較して有意改善(p<0.05)を示した.2015年度,2016年度で研修医の最優秀サマリー賞を選考する際にもこの評点法を採用し,複数指導医,非医師指導者計21人で評点して平均し,点数差をもって選考した.この際,医師の評点と非医師(看護師・薬剤師・診療情報管理士・診療情報担当事務)との間に評点の有意差はなかった.
【考察】退院時サマリーについては標準化の検討が進んでいるが,そのラインに沿ったサマリーの項目設定と内容の評価法の試みを継続したところ,具体的な指導が可能になったことが奏功し,サマリーの質向上を得る事が出来た.さらに診療情報に精通していれば非医師でも十分に質的な監査に関与できることが示唆され,有意義と考えられた.