Japan Association for Medical Informatics

[2-F-3-OP10-4] 患者データに基づく入院患者の不穏予兆検知

大野 友嗣1, 細井 利憲1, 久保 雅洋1, 清水 哲平2, 森口 真由美2 (1.日本電気株式会社, 2.医療法人社団KNI北原国際病院)

急性期病院に入院中の患者が不穏になると、看護師を始めとする医療スタッフはその対応に多くの時間を割かれるなど大きな負担が発生する。また、患者自身も、点滴や酸素カニューレの自己抜去で治療が遅延したり、転倒・転落による怪我が発生したりするなどのリスクがある。しかしながら、不穏発生に伴う負担増大やリスクなどの影響は定量化されてこなかったし、不穏の発生を事前に検知することはできなかった。そこで、不穏による影響の定量化と不穏の事前検知技術の確立を目指して、電子カルテデータの分析を行うとともに、患者データに基づく不穏の予兆検知技術の開発を行った。
通常、電子カルテには、不穏の詳細、例えば日々の変化などについては記述されていないことが多いことから、日々必ず記録される別の項目から不穏の発生状況を推定することとした。不穏患者に対しては、自己抜去や怪我のリスクを抑えるため、身体抑制が実施されたり、鎮静剤が投与されたりすることが多い。鎮静剤投与は実施毎に必ず記録されるし、身体抑制も定期的に記録が行われる。そこで、「抑制」や「鎮静剤投与」の実施が「不穏」と相関していると仮定し、その影響を推定することとした。北原国際病院(脳神経外科・循環器内科・神経内科)にて2015/6/1から1年間分の電子カルテデータについて、個々の抑制が実施された患者群、鎮静剤投与が実施された患者群、抑制または鎮静剤投与が実施された患者群を分析した結果、いずれかの抑制または鎮静剤投与が実施された患者群が不穏患者と相関があることがわかった。不穏による影響の一つとして、患者の治療遅延や退院遅延を分析した結果、1週間までの実施による影響は小さいが、1週間を超える実施は大幅な退院遅延に繋がっている。これらの電子カルテデータ分析と合わせて、患者データに基づく入院患者の不穏予兆検知技術を開発した。