Japan Association for Medical Informatics

[2-G-1-OP5-2] 日本語におけるIdea Density: 認知症の早期発見を目指して

柴田 大作1, 伊藤 薫1, 若宮 翔子1, 木下 彩栄2, 荒牧 英治1 (1.奈良先端科学技術大学院大学, 2.京都大学)

【背景・目的】
認知症高齢者の増加に伴い,認知症のスクリーニングが社会的にも大きな意味を持ち始めている.そこで,症状の一つである認知能力の低下に伴う言語能力の低下を調査する研究が注目されている.言語能力に着目した認知症スクリーニングに関する研究は,Snowdonらの研究に始まった.Snowdonらは,ナン・スタディと呼ばれる修道女の日記を分析し,若年期のIdea Density(人文学的に定義される文章中の命題数を単語数で除した値)と晩年期における認知症の発症率には一定の関係性があることを示した.このようにIdea Densityは認知症のスクリーニングに有効な指標であるにもかかわらず,日本語において検討はなされていない。そのため我々は日本語におけるIdea Densityの定義を行い,これによる認知症スクリーニングの可能性について検討する.
【材料】
認知症と診断された患者42名(男性:7名,女性: 35名)に,最近楽しかったこと,昔楽しかったこと,好きな食べ物に関する質問を行い,その回答を録音し,書き起こしたものをコーパスとして用いる.
【手法】
日本語コーパスからIdea Densityを人手により算出することはコストが大きく,現実的ではない.そこでCPIDR (英語のIdea Densityを計算するソフトウェア)を用いる.Google社が提供しているGoogle翻訳により英語への翻訳を行ったコーパスをCPIDR に適用することでIdea Densityの算出を行う.
【結果・考察】
算出したIdea DensityとMini Mental State Examination (MMSE)スコアの相関係数を求めたところ,0.28と弱い相関が見られた.また,85歳以下に限定した場合,相関係数は0.57であり,中程度の相関が見られた.このことから85歳以下において,本手法は有効であり,認知症のスクリーニングに大きく寄与できる可能性が示された.