Japan Association for Medical Informatics

[2-G-3-OP13-5] レセプト情報・特定健診等情報データベース(NDB)利用促進に向けた取り組み―患者突合(名寄せ)の手法開発と検証-

久保 慎一郎1, 野田 龍也1, 西岡 祐一1, 明神 大也1, 東野 恒之2, 松居 宏樹3, 加藤 源太4, 今村 知明1 (1.奈良県立医科大学 公衆衛生学講座, 2.(株)三菱総合研究所 ICT イノベーション事業本部, 3.東京大学大学院医学系研究科 公共健康医学専攻臨床疫学・経済学, 4.京都大学医学部附属病院 診療報酬センター)

【目的】レセプト情報・特定健診等情報データベース(以下、NDB)は、日本の保険診療受診者の悉皆調査であるが、個人IDが存在せず、保険者番号等を基にハッシュ化した「ID1」と、氏名等を基にハッシュ化した「ID2」の2つを組み合わせて名寄せを行わなければ、個人を追跡できない課題があった。本研究では名寄せにおける2種類の過誤を低減し、新たな個人IDとなる「ID0」を開発し、検証を行った。
【方法】名寄せの検証には平成25年4月~平成26年3月の計12か月分の医科入院、医科入院外、DPC、調剤レセプトを使用した。これらを基に、ID1、ID2の特性を確認した。また、ID1、ID2、診療年月、転記を使用して名寄せ「ID0」を作成した。ID0を基にして、患者数集計を行い、国勢調査の人口と比較し、その妥当性を検証した。
【結果】NDBの特性として1患者に複数のID1、ID2が存在する。1つのID1に対するID2の重複をみると、医科入院外と調剤レセプトで多くの重複が発生していた。また、受診した医療機関数ごとに同一ID1におけるID2数の平均を比較すると、受診する医療機関数が増えてもID2は概ね2程度に収束しており、ID2の変更理由である「患者氏名の表記ゆれ」は1人当たり2種類程度となることが分かった。また、従来名寄せが困難であったID1とID2が同時に代わる場合であっても、同年月で2枚のレセプトが発行されることがあるため、継続的な受診がある場合は名寄せが可能と分かった。従来のID1による名寄せでは、名寄せ後の人口が総人口を上回る欠点があったが、ID0による患者数はほぼ総人口の範囲内に収まり、名寄せ精度が改善されたことが示された。新生児から小児期と高齢者世代では、1年間にほぼ1回以上受診していた。名寄せ率(ID1数÷ID0数)を求めると、退職期(60~69歳)や後期高齢者医療制度への転換期(75~79歳)で名寄せ率向上を認めた。
【結論】ID0によって名寄せの精度が向上した。ID0を用いてNDBのコホート研究の利活用が求められる。