一般社団法人 日本医療情報学会

[2-H-1-OP6-2] 地域医療連携ネットワークシステムの高度化の試み

中村 直毅, 井戸 敬介, 中山 雅晴, 冨永 悌二 (東北大学医学系研究科)

宮城県では、東日本大震災を経て、平成24年度からみやぎ医療福祉情報ネットワーク(MMWIN: Miyagi Medical and Welfare Information Network)を構築・運用してきた。MMWINは、宮城県の医療機関の保持する診療情報をSS-MIX2形式でバックアップするとともに、蓄積された診療情報を用いて、地域医療連携において活用するICTシステムである。平成29年6月時点で、2.2億件の延べ700万人の診療情報が蓄積され、患者の紐づけは3.4万人に達し、順調に運用が進み、現在は、システム利活用の促進に取り組んでいる。宮城県の全医療圏を俯瞰するMMWINの5年間の運用を通して、
- 電子カルテ等でSS-MIX2形式でデータ出力できない施設における診療情報の提供
- 職種やデータ種別単位でのアクセス制御に加えて、施設や利用者単位での診療情報に対する細かい開示制御
- 情報提供施設および情報参照施設の双方で行う名寄せに伴う業務負荷
- 医療圏ごとに異なったpolicyで運用する仕組み
- 運用状況やログの可視化
- 電子カルテから出力されたSS-MIX2データの正確性
- 宮城県外の地域において稼働しているEHRシステム同士での情報連携
などの技術的な課題が明らかになった。MMWINでは、これらの課題を解決すべく、システム更改および平成28年度第2次補正予算「クラウド型EHR高度化事業」を通して、MMWINシステムの高度化を図る予定である。
本稿では、上述した課題について述べるとともに、MMWINシステムの高度化について述べる。具体的には、システムのスリム化、システム機能の見直し、レセコン等などの情報からSS-MIX2形式のファイルアップロードの仕組み、職種・データ種別・施設・利用者ごとのデータ開示制御、利用者向けの名寄せの省力化、運用状況やログの可視化をすることでシステム管理者の運用負荷を軽減する運用支援、病院からアップロードされるSS-MIX2データの品質確認、標準化技術を用いた近隣のEHRシステムとの連携など、MMWINシステムの高度化の取り組みについて述べる。