一般社団法人 日本医療情報学会

[2-I-1-JS1-1] 臨床研究における臨床検査データ標準化の重要性

片岡 浩巳 (川崎医療福祉大学 医療技術学部 臨床検査学科)

日常診療から得られたデータを蓄積し、それらを解析することで医療の質の向上や新たなイノベーションを生み出す研究が注目されている。これらの研究は可能な限り信頼性の高い構造化されたデータを収集することが欠かせない。わが国では、SSMIX2を用いた大規模データベース構築プロジェクトが先進的に進められ、大きな期待を集めている。このような中で、臨床検査分野の標準化について、コードの粒度や結果値表現の違いや、長期的精度のズレや測定法間の違い等の問題が浮上し始めている。また、すでに大規模プロジェクトが始動している中で、標準化レベルの向上を目指した改革をどのように具現化していくかも議論が必要となっている。
臨床検査データを用いた後ろ向き研究を行う場合、同一施設内であれば臨床検査値の長期的精度の維持のみが課題となるが、複数施設のデータを統合した解析を行う場合は、臨床検査項目コードや結果表現形の標準化が必須となる。特に、臨床検査項目コードの粒度の課題では、測定法の違いから生じる検査診断特性の違いを分類できる臨床検査コードの規格化と、データクレンジング作業を効率的に実施できる、定性検査や記号付きの数値データ等の結果表現形の標準化が必要となる。また、データ解析時のデータ抽出条件、特に投薬や検査のイベントにかかわる条件に関しては、曖昧な表現を避け、確実に再現できるルール表現の仕組みの構築も必要であり、さらに、今後は、解析結果を評価するメタアナリシスから、得られた知識データベースのデータ収集・評価に至る領域でも標準化に取り組む必要があると考えている。
本演題では、これまでの標準化された規格の問題点から、データ解析、そして、得られた情報の統合に関わる知識データベースの構築に至る視点で、臨床検査の情報領域における標準化の必要性について述べ、具体的な解決策の事例についても紹介する。