一般社団法人 日本医療情報学会

[2-J-2-OP9-2] ソシオテクニカルアプローチを用いた電子カルテ統合型・透析システムの開発に携わって得た教訓

藤井 耕1,2, 北川 美帆2, 筒井 孝典2, 榎田 寿美3, 白川 京3, 上野 千絵3 (1.公益社団法人信和会 情報システム部, 2.公益社団法人信和会 川端診療所 臨床工学部, 3.公益社団法人信和会 川端診療所 透析看護部)

【背景】2016年の電子カルテリプレイスに併せて、電子カルテ統合型の透析システムを導入することになった。ソシオテクニカルアプローチ(STA)を用いてシステム開発を行ったのでその成果について報告する。

【方法】開発当初より透析室役責者とベンダーとのワーキンググループ(WG)会議を開催しシステム設計を行ってきた。併せて同様のシステムを導入している病院の見学も行い、システム構築のイメージ作りの参考とした。またシステムのプロトタイプを透析室スタッフ全員で内容を確認し、要望をまとめ上げシステムへの反映を試みた。

【結果】昨年7月にシステム導入を行ったが十分に要望が反映されていない結果となった。その後WG会議を19回重ね188項目の要望を提出し、これまでに5回のカスタマイズを行い44.1%の要望を実現した。いずれもこれまでの業務スタイルを継承する内容で、現場の業務実態をシステム側に反映させるようにシステム設計を行った。その結果、随分と使いやすくなった反面、使いにくい部分も未だ幾分かは存在する。こちらの業務スタイルの詳細がベンダー側に充分に伝わらないのが原因であることが示唆された。

【考按】STAとは、課業を達成するために用いる技術(技術システム)と、組織で活動する人々(社会システム)がうまく適合した組織を作ることを目的としたアプローチ法である。システムを作る側と使う側には常にgapが存在する。それらのgapを埋めるためにもSTAが重要である。今回STAでのシステム開発に着手した結果、業務形態に合うシステムを導入することが可能であった。しかし開発に時間が掛かり、導入が遅延しやいというデメリットも確認した。ベンダーとの綿密な連携が必要不可欠である。
【結論】技術に規定される働き方ではなく、技術を利用する働き方を生み出すアプローチとしてSTAという概念は重要である。今後もSTAによるカスタマイズを続けることによってシステムと労働両者の最適化を図りたい。