Japan Association for Medical Informatics

[2-J-2-OP9-3] 情報共有の深化を目指した、透析部門に関する機能をもつ電子カルテモジュールの開発

平木 秀輔1,2, 近藤 尚哉2, 谷口 陽平3, 東浦 緑2, 宇野 久美子2, 中嶋 由紀4, 小林 永治4, 藤田 健一郎3, 高井 康平5, 塚本 達雄2, 柳田 素子2, 岡本 和也1, 田村 寛1, 黒田 知宏1 (1.京都大学医学部附属病院 医療情報企画部, 2.京都大学医学部附属病院 人工腎臓部, 3.京都大学医学部附属病院 経営管理課医療情報管理掛, 4.キヤノンITSメディカル株式会社, 5.日本アイ・ビー・エム株式会社)

透析患者の高齢化と生命予後の改善に伴い、慢性維持透析患者が他疾患の治療のために急性期病院に入院することが増加している。急性期治療における透析療法は患者の循環動態と恒常性を大きく変動させ全身状態に大きな影響を与えるものであり、原疾患の治療戦略を阻害しないよう主科と協調した専門的な管理が求められる。したがって、透析室の医師とスタッフ間のみならず主科医師や入院病棟スタッフとのリアルタイムの情報共有が極めて重要となる。例えば当院においては、透析治療中に投与した注射剤を病棟で二重に投与した事例などを経験している。しかしながら、一般的な透析室統合管理システムは主に透析専門施設を対象に開発されたものが多く、透析室内の業務を計算機システムに落とし込んだ「透析室内で閉じたシステム」となっているため急性期総合病院において院内他部署との情報伝達手段として不足となる部分があった。そこで、本研究では透析部門に関わる処方・指示出し等のオーダーリング機能とバイタル・SOAP等の記録機能を電子カルテ本体の機能として提供するモジュールを開発し、透析室において行われる治療の方針や現況をリアルタイムで院内各部署から確認できるようにした。加えて、透析装置からのバイタル情報を経過表に自動的に取り込むインターフェースも併せて開発することで透析室スタッフの業務軽減を図った。本システムが稼働してから2017年6月時点で9ヶ月程度経過しており、透析室・病棟において継続して利用されていることから本システムの有効性は高いと考えられるが、導入の過程において明らかになったメリット及びデメリットも併せて議論する。なお今後は透析室のみならず、重症系病床で行われている急性血液浄化療法にもシステムを拡張し、さらに安全かつ適切な治療の提供を支援する予定である。