一般社団法人 日本医療情報学会

[2-J-3-OP14-2] クラウド型EHRの構築手法についての検討

藤田 伸輔1, 井出 博生2, 相羽 良寿2, 藤原 健太郎2, 土井 俊祐3, 竹内 公一2 (1.千葉大学予防医学センター臨床疫学, 2.千葉大学医学部附属病院地域医療連携部, 3.東京大学企画情報運営部)

医療情報の電子化では、病院情報システム(EMR)から地域健康情報共有システム(EHR)へと発展してきた。超高齢社会への突入に対応するべく、わが国の医療がフリーアクセス、一医療機関完結型から専門診療科・地域分業制へと変革するのに合わせて広域でのEHRが求められている。広域でのEHRでは複数ベンダEMRの接続、さらには複数のEHR接続も視野に置かねばならない。わが国のEMRおよびEHRは完全な自由競争の中で発展し、標準化対応は必須ではなかった。このためクラウド型EHRの構築には①名寄せ、②データ標準化、③データ開示範囲、④同意取得などの課題が存在する。今回我々はクラウド型EHRを個人健康管理システム(PHR)の側から構築することに挑戦し、EHRを基盤とする場合とPHRを基盤とする場合のメリットデメリットを検討したので報告する。
PHRを基盤にすると本人同意で情報共有がすすめられるために医療介護機関に対する同意取得をプログラム上でリアルタイムに処理できる。さらに同意取得と本人確認(名寄せ)を一体として行う事(特許出願中)で名寄せ処理プログラム・事務作業が不要となる。データ開示範囲についても本人同意に基づくため、制御が単純化される。データの標準化についてはEHRを基盤としてもPHRを基盤としても同じであるが、我々はPHRの機能としてデータの標準化を行い、EMRもしくはEHR側での標準化を不要とした。さらに他のEMRやEHRおよびPHRのデータを返す際に先方の使用しているデータ形式に変換して返すスマートハンドシェイク機構を考案した。PHRを基盤とするには患者に開示された情報に限定されること、患者がスマートフォンなど電子情報機器の扱いに慣れていること、といった制約条件が発生するが、クラウド型EHRシステムの技術的課題の多くを低コストで解決できることが判明した。